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第56話
俺に気付かないのか先生は話をつづける。
「虹君。子宮口の細胞採取しますので、下着を脱いでここに横になって下さい。」
え?!
下着?!
触診??
し、子宮口???
今までそんな検診した事ないよ……。
1人であわあわしてると
「大丈夫、僕が診るから。怖がらなくていいよ。」
「あ、医師の資格もちゃんとあるからね。」
と、付け加えてティアが微笑む。
もう俺は何が何やらで……、促されるまま下着を脱ぎ横になる。
もちろん担当医の先生も一緒で。
恥ずかしくて死にそう……。
でも、そうも言ってらんないから羞恥を押し殺して顔を両手で覆って処置が終わるまでじっと耐える。
ティアの手って言い聞かせるだけでもだいぶ恐怖心は和らぐから不思議……。
お尻に器具を差し込まれ、ちょっとチクッと鈍い違和感があった程度ですぐに終わってほっとする。
隣で指示を出していた先生が一言。
「ふむ。お尻も塗り薬が必要ですね。治るまで性交の回数は控えるように。」
「はい。分かっています。」
そう返すティアはやはり何処か嬉しそう……。
色々と恥ずかしい検診が終わって、またティアにお姫様抱っこされて部屋に戻る最中、ずっと気になってた事を聞きたくてうずうず。
すると、ティアが身じろぎする俺の顔を見つめながら言いたかった事を察してくれたのか、話し始める。
「オブ先生は僕の小さい頃からの担当医だったんだ。僕がやっとの思いで虹と再会できて、パートナーになれて、愛し合えたからね。なんて言うのか報告出来て嬉しかったんだよね。」
────ずっと相談にのってもらってたからね。
そう言うと、少しはにかんだ笑みを見せて俺に触れるだけのキスを落とす。
担当医の先生……もとい、オブ先生はウェルランド博士の親友でティアが物心つく時から研究室にいたらしく、担当医の枠を越えて親代わりと言っても過言では無いくらいだったらしい。
あの一見無愛想なオブ先生にそんな一面があったなんて……。
ゆくゆく子供を産む頃にはたくさんの検診や検査があるのを踏まえてオブ先生の元に師事し医師の資格も取ったらしい。
俺が成人する時まで出来ることはやっておきたかったんだって。
何だかティアの底知れぬ愛情と執着を感じてただただ圧倒されるばかり。
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