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第4話

「……デカイな」 「ほんと……もういっぱいいっぱいだよ」 「そうか? まだ余裕あるだろ」 「余裕ないって。もうなんでこんなに大きいの……。ちさっちゃんどうにかして!」 「俺に言われても」 和佐の実家から送られてきたものを開封設置までしてくれた用務員さんが帰ったあと、1LDの部屋の一角に設置されたそれを眺めた。 和佐はしきりにため息をついている。 「これまじでイラネーんですけどー」 うんざりとした様子の和佐にまぁ俺もいらない、だけど自分のじゃないから興味深々にそれに近づいた。 それは健康器具のロデオなんとかっていうやつだ。 乗馬運動器具、スイングで腰回りの肉をおとしたりとかな深夜のショッピング番組でよく見かけるもの。 「いいじゃないか」 「そう? じゃあちさっちゃんいる?」 「いるか」 「でしょー」 大きなため息をついて和佐は「どう考えても使わないし」とぶつぶつ悪態ついていた。 だが返すことはできないだろう。 和佐の母親が一度言いだしたら聞かないことは俺も良く知っている。 「それになんだよ、これ……」 ロデオとともに送られてきた雑誌やらDVDを眺めうんざりとしている和佐。 "モテるための20の方法"だとか書かれた雑誌やら、今日の一品、など料理本などが数冊あった。 「男子校でモテてどうすんだよ……。それに料理しないし」 学園に染まることなくノーマルな和佐は雑誌を部屋の片隅に追いやり、不貞腐れたようにゲームをしだした。 「……モテる」 脳裏に渚のことがよぎり、俺は雑誌を手にした。 ページをめくると当然だが男が女にモテるにはということが書かれてある。 笑顔だとか気の配り方だとか姿勢だとか、わりといちいち細かいな。 だが女相手の場合だから渚に有効なのかはわからない。 さらにページを進んでいくと一気にレベルが上がってHOW TO SEXになっている。 「……」 自慢じゃないが中等部から全寮制のこの学校にいるし、初恋は渚だしで俺に経験があるはずがない。 だがもちろんヤリ方はしってる。女相手も男相手も。 男相手ももちろん経験はないが、バイホモの多いこの学園に居れば耳に入ってくるし、たまに風紀との合同見回りなどをしているときに最中を見たことはある。 「……」 「なンか言った、ちさっちゃん?」 心の中で呟いたつもりだったが声に出てたらしい。 顔を上げた和佐に俺は少し迷ったが大事なことなので相談してみることにした。 「渚はどっちだろう」 「なにが?」 「……いれるほうかいれられるほうか」 「……」 「……」 「……さぁ……っていうかさ。ろくに会話もできてない癖にそこまで考え飛ぶ?」 「大事なことだろ」 「そうだけどさー。……どうだろうねー。でもノンケなら普通にいれるほうシたいんじゃねーのー。俺だったら掘られるのヤだし。ちさっちゃんだってイヤだろ?」 「別に」 「……」 「……」 「……え。掘られていいの」 ぽかんと大口開けている和佐に頷く。 「ま、まじで」 「だって痛いんだろう? 渚に痛い思いをさせたくないしな」 「ち、ちさっちゃん……。男前!……なのかなんなのか……本当にちさっちゃんって」 バカって言うか天然っていうか、と続ける和佐に眉を寄せて睨む。 「俺は渚を大事にしたいんだ」 「……あっそう」 形容しがたい表情になった和佐がため息をついて「だけどさー」と頭を掻きながら首を傾ける。 「やっぱ緑里がノンケだとした場合はさ、そこまで辿りつくの難しいよね。だってさー告白してもふられるほうが可能性高いし。ちさっちゃんどーすんの」 自慢ではないが俺はわりと顔がいいほうだ。 この学園では抱かれたいと抱きたいだのいう人気投票があって、抱かれたいランキング一位だったりする。 だからもし俺が渚じゃなく一般生徒に告白したらあっさり受け入れられるかもしれない。 だがしかし、渚なら……和佐のいうとおり断られる可能性が大だ。 「どうすればいい」 「さぁねー。まーちさっちゃんがケツ差し出したところで向こうが勃たなきゃイミないよねーって話だしさ。下品な話」 「……そうか」 確かに勃たなきゃ意味がないな。 そうするためにはどうすればいいのか。 まずは渚が俺に性的魅力を感じなければならないということだろうな。 性的魅力……。 「あー……また死んじゃった。ツマンネーもうやーめた」 俺と話してるせいでゲームオーバーになったらしくコントローラーを放り投げる和佐は送られてきた雑誌やDVDを漁りはじめ。 「あ、これ兄貴からのAVだ。ちさっちゃん、見ていーい?」 「ああ」 これも勉強のうちだと、なにか恋愛の極意を得られるのかもしれないと了承し俺たちはAVを見はじめたのだった。

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