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act.1誘惑クローバー<40>

副会長と書記の不在を各自好きなように噂する生徒達の波の中で、聖と爽の二人もまた都古同様戸惑っていた。 「おかしいな、なんで葵先輩いないんだろ」 「具合でも悪いのかな。なんか体弱そうだったし。な、聖」 葵の姿を拝むのだけが目的で式に出席した聖と爽は色々と理由を考えるが、どれも単なる想像に過ぎず釈然としないものばかりだ。 「……あーあ、ショック」 「な、爽。こうなったらこっちから会いに行っちゃう?」 しょんぼりと肩を落として落ち込む爽の背中を軽く叩いて、聖はそんなことを言って励ました。残念で肩を落としたいのは自分も同じだが、過ぎたことを悩んでも仕方がない。これからいくらでも会うチャンスはあるのだ。 「クラスだって、名前だって知ってるんだし。好きなだけ会いに行けちゃうじゃん」 生徒会がどんなに格上の存在で、一般の、しかも下級生が気軽に訪問できるようなものではない、なんてことを編入生である聖と爽は知らない。けれど、それゆえにこうして元気になれている。 それにポケットに忍ばせた葵から貰ったコサージュが聖に、爽を励ますくらいの気力を与えてくれていた。 「だよな、そうしよう。ほんと俺、先輩のことばっか考えてるよ」 ほら、と言葉通りの夢中度を示すように開いた爽の手の中にはやはりコサージュ。負けじと聖もポケットから取り出して、自分のほうがいかに葵を想っているかを主張した。 「「やっぱり俺ら双子だな」」 似てないと言い張りつつ、することは同じ。思わずそう息を合わせていった言葉に、また互いにおかしくなって笑った。

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