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act.1誘惑クローバー<43>
そんなことを考えていると、また都古のなかに生徒会に対する怒りがふつふつと湧き上がってくる。それに、もうここには居ないとなると、生徒会の巣である生徒会室に逃げ込んだ可能性もあると、ひらめくことができた。
そうと決まると一直線な都古。スクッと立ち上がると、行き慣れた生徒会室へと猛ダッシュで向かった。
生徒会室は、普通の校舎の中にはない。特別棟と呼ばれる場所にある。そこはほとんど生徒会のための建物と言っても過言ではないほど、一般生徒には縁のないところだった。それゆえ、どこか一般生徒からは神聖化さえされている。
都古はそんな特別棟に遠慮もなしにずかずかと入り込むと、階段を上ってすぐ存在する生徒会室の扉をたたいた。
葵がもし普通に中に居たら、ノックもせずに入ることを怒るかもしれない。都古は焦った頭の中でもそう考えて、とりあえず乱暴ではあるがノックをしてみた。だが返事はない。
試しにノブを回してみるが、当然のように鍵がかかっている。
もう一度、今度はもっと強めに叩くが人は出てこない。それどころか返事すらない。これはいよいよ怪しい。
だが蹴破ろうと都古が身構えたとき、簡単に扉は開いた。
「ごめんちょっと手が離せなくて……って烏山くん?どうしたの?」
謝りながら出てきたのは、会計の高山奈央。大嫌いな生徒会のなかでも、唯一都古が葵と二人きりにさせても大丈夫と認識している人物だ。ということは、ここではないだろう。
都古はすぐに判断して、くるりと回れ右をして走りだそうとした。だが、珍しく一人で来たうえに、無言で帰ろうとする一見冷やかしのような都古に奈央が慌てて声をかけた。
「ちょ、ちょっと何かあったの?」
そこで都古は足を止め、しばし考えた。葵が居たらいつもすぐに呼んでくれる奈央のことだから、きっとやはりここには葵は居ないんだろう。だが、だからといって葵の所在を知らないというわけでもない。聞いてみるのも賢い選択である。
だから振り返って尋ねてみようとしたとき、奥からもう一つ顔が覗いた。
「奈央、お客さん?……あぁ、葵ちゃんの飼い猫か」
しれっとした顔をして出てきたのは櫻だ。都古はその顔を見てすぐに頭に血が上って奈央が止めるのも聞かずに櫻に掴みかかった。
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