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act.1誘惑クローバー<47>

あまり学校には出席せずに好きなことだけをして毎日を過ごしている幸樹。 軽い冗談を飛ばす陽気な人物と、今は一見見られがちだが、自分のしたいことを止められ拘束されたり規則に束縛されるのをひどく嫌い、もしそんな状況になった場合はとことん暴れまわるような凶暴性をも持っている。そして他人に酷く冷たい一面もある。 「やっと本性だしたな。久しぶりに会ったっちゅーのに相変わらずつれないなぁ」 「お前がそうさせてんだろ。で、何か用あんじゃねぇのか?つか、ちゃんと式出たのかよ?」 京介は何も幸樹が真面目にクラスの列に並んで式に出席したのかを聞きたいわけではない。ネクタイすらしていない幸樹はこれでも生徒会の人間。役員紹介には出たのかと、そう聞きたいのだ。 前年度も選挙で選ばれ役員を務めていた幸樹は当時から学校には来ず、もちろん生徒会にも出席していないことが多かった。そのため、”幸樹を見かけたら一週間幸せでいられる”なんて変な迷信も学校で流れているくらいだ。 でもやはり役員がそれではまずい。前年度からもたっぷりと当時の会長に絞られていたが、今年度もまたこんなところでサボっているところを見つかったら新しい会長に怒られることだろう。 京介は幸樹が怒られるのは別に構わなかったが、自分まで一緒にサボってたなんてことでとばっちりが来るのが嫌なのだ。 「なんと、驚くなかれ!」 「出てないんだろ?」 「俺をなんだと思ってんねん。出たで?お宅の幼馴染ちゃんはおらんかったけど」 まさか出たとは思わなかった京介は、それにも驚いたが、それ以上にその後の言葉に驚かされた。 「は?葵出なかったのか?」 「いやな、俺も出る気はなかってんけど、会長にそらもうえげつない脅しをかけられてな、怖いから」 「うるせぇな、葵のこと聞いてんだよ。お前のことなんかどうでもいい」 自分の幼馴染なんて葵しかおらず、あの真面目な葵が出なかったとなると途端に心配でたまらなくなる京介。わざとなのか、自分の話ではぐらかそうとする幸樹のツンツンと立てられた金髪を掴んで睨みつけた。 「ほんまにあれやな。幼馴染ちゃん馬鹿、京介は。そんなに心配なら首輪つけて繋いどきゃええやん」 「だから、葵が出なかったのかって聞いてんだよ」 「はいはい、出ませんでしたよ。なんか月島と二人で消えたらしいで?」 葵だけならまだしも、一緒に消えたのが副会長の櫻となるともっと京介の心配は増す。また泣かされてはいないだろうか。葵の泣き顔が急に浮かんできて胸の締め付けられる思いがする。相当に自分が葵に対して心配症なのは自覚しているが、仕方がない。

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