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act.1誘惑クローバー<49>

「部屋、行こ。会長の」 だが都古は京介の言葉を無視して寮へとさっきまでのスピードのまま駆け出した。どうやら葵が見つかるまで都古の足は止まらないらしい。 京介も仕方なく後を追って寮に向かった。けれど、都古の暴走を止めるものがそこにはあった。 「都古、コレどうすりゃいっかな」 二人は今寮のエレベーターの前で立ち往生していた。忍の部屋がある最上階には生徒会専用のエレベーターを使う必要がある。そしてそのエレベーターは専用のカードがなくては使うことができない。 役員ではない二人は当然そのカードを持っているわけもなく、葵が居るかもしれない忍の部屋に行くすべもなくなってしまった。 「センサー……壊す?」 「馬鹿野郎、エレベーターまでぶっ壊れたらどうすんだよ。もちっと頭使え」 極限に達している都古の思考もまた飛んでしまっているが、京介だっていい方法が思いつかない。とりあえずセンサーにかじりついて本気で壊し出しかねそうな都古をひっぺがすので精一杯だ。 「待てよ。カードがありゃいいんだろ?」 だが、ぐるぐると唸ってセンサーを睨み続ける都古を見て逆に冷静さを取り戻してきた京介は少しずつ思考を働かせていった。 カードを持っているのは生徒会の役員のみである。忍は今葵と上の部屋に居る可能性が高いのだから却下だ。なら残るは櫻か奈央か……。 だが、都古に聞いたところによると、櫻が事の原因を作ったようだからカードをそう簡単に渡してくれそうもないし、奈央も櫻と共に居るのだから邪魔されてすぐにはカードをもらえそうもない。 となると他に誰か……。 そこまで考えて京介はある人物を思い出した。 「思いっきりいるじゃねぇか。都古、来い!」 またセンサーに掴みかかりだした都古を強引に引っ張り出すと京介はさっきまで来た道を引き返して、大急ぎで校舎へ走りだした。 「京介、どこ?」 さすがに少し疲れの見え始めた都古の声を背中に受け止めながら、京介は二段抜かしでどんどんと校舎の階段を登っていく。都古もそのあとを必死でついてきていた。 そして京介が階段をのぼりきり、突き当たりにある扉を勢い良く開くと、目的の人物は運よくまだそこにいた。

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