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act.1誘惑クローバー<64>

当り前のようにそこへ進んでいく一向。葵を中心として構成される京介と都古の目立つ三人組はいつだって注目を集める。食堂の扉を開けたときから席につくまで大勢の生徒たちから熱い視線を浴びるのもまた日常だ。 だが、今日はいつもとは少し違った。 三人組に綾瀬と七瀬が加わることはあったが、今日の五人組はそれとは異なっているのだ。 見掛けない美形双子。しかも緑色のネクタイをしていることから一年生のようだ。皆、その正体を知りたくて、食堂全体の空気が一気にざわめきだした。 今は人懐っこい葵だがそれは高等部に上がってからのこと。それまでは引っ込み思案で物静かな生徒だった。だから葵には食事を共に出来るような親しい間柄の友達が非常に少ない。 それに、葵の隣には常に番犬のような京介と凶暴な猫の都古がいるおかげで、お近づきになりたくても生半可な覚悟では食事を誘えやしない。葵自身が生徒会という特殊で高位な身分にあることも一般生徒が近づき難い理由になる。 葵を不届きな輩から守ろうと活動しているのファンの団体まである。下手に葵に近づいたら彼等から相当に痛い目に遭わされてしまう。そんなことは周知の事実だ。 周りが公認している葵の友人は中等部から仲の良い羽田双子か、身分が対等で付き合いのある生徒会メンバーしかいない。 だから見た目は生徒会役員にもひけをとらないが、ただの一年生である双子が平然と共に行動していることは大事件だった。 葵の、ではなく京介や都古の友人という可能性も低い。短気で喧嘩が強い京介は恐れられているし、都古は葵以外には全く心を開かないからだ。 葵だけでなくそれぞれ人気のある京介や都古と一緒に居ることも、聖と爽への羨望と妬みを煽ってしまう。 強い視線を浴びているのに気付いたのか、聖と爽はより煽るように得意げな、そして不敵な笑みを浮かべている。聖に至っては葵から見えていないのをいいことに、中指までさりげなく立てて挑発さえする始末。 そんな生意気な双子の仕草に、唖然とする者、わなわなと怒り心頭で震える者、はたまた悩殺された者……食堂中が様々な反応を見せる生徒で満たされた。

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