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act.2追憶プレリュード<1>

* * * * * * 新入生歓迎会当日。寮の正面玄関や、校門へと続くロータリーには各々荷物を抱えた生徒たちで溢れかえっていた。 学園行事とはいえ、この歓迎会は生徒会主催のイベント。会場である学園の宿泊施設までの移動手段は生徒自身が自由に選べるシステムになっている。 お坊ちゃま校だけあって、生徒たちの中には自家用車を迎えに来させて会場まで向かうものもいた。その代表格は生徒会のツートップである忍と櫻。 もちろん大多数の生徒は生徒会が手配した大型バスに分かれて乗り込んでいく。 「全く、あの二人はもう少し生徒会の人間だって言う自覚を持ってほしいな」 生徒たちが遅れなくバスに乗り込んでいるかを確認していた奈央は、さっさと自家用車で移動してしまった二人への愚痴を零した。 「……ごめんなさい、僕も、バス…」 その傍で共に作業を行なっていた葵は、名簿にチェックを入れる手を止めて奈央を見上げた。 車が苦手な葵も、このバスには乗らずに京介、都古と一緒に電車で移動するつもりでいた。奈央が、”バスに乗らなかったこと”を責めていると勘違いした葵は不安気に瞳を揺らす。 「あ、違うよ。そういうことじゃなくて。こういう作業すら二人は手伝わずに行っちゃったからね。葵くんが電車で移動するのは全然問題ないから」 奈央が不安にさせたことを謝罪するように、朝日を浴びて光る葵の金糸のような髪に手を伸ばして撫でてやると、安堵したため息がこぼれた。そんな様子を見て奈央もホッとして、触り心地のよい髪をもう一撫でしてみせる。 「……アオ、終わった?」 二人の時間を破ったのは、無機質な声音の都古。 大切な仕事中だから、と大人しくしていたが、いくら生徒会の中で唯一まともだと評価している奈央であったとしても、気軽に大切な主人に触れられるのは我慢ならない。 「みゃーちゃん、もうちょっと待ってて?」 「やだ。行こ?」 まるで奈央から守るように葵を後ろからぎゅうと抱きしめた都古は、葵の抵抗を物ともせずに甘えた声を出してみせる。そうされると葵が弱いことをよく知っているからだ。 「あとは出発するだけだから。もう大丈夫だよ、葵くん」 「でも、まだ上野先輩が……」 見かねた奈央が助け舟を出してやれば、葵の口から出たのは幸樹の名前だった。生徒会の一員でありながら、準備も手伝わず、そして当然のように今朝も姿を見せていない。

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