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act.2追憶プレリュード<6>
「だーかーらー新入生歓迎会だって。二泊三日の行事。この間案内のプリント渡したじゃん」
「そんなものいちいち見てられないわよ。その歓迎会とやらと、私の仕事とどっちが大事だと思ってるの」
宿泊が絡む行事ということで、双子は一応保護者であるリエに案内を渡したのだが、ばっさりと切り捨てられてしまった。
「もう、だから私立になんて入れたくなかったのよ。勝手に髪型は変えるし、スケジュールに融通利かないし」
リエは相変わらずパソコンのディスプレイから目を離さずに、双子の桐宮学園への編入の愚痴を零した。
金銭的には全く困っていないし、世間的にはかなり裕福な部類だが、リエは双子の進学には一貫して公立にこだわってきた。家から近い場所なら時間の調整もしやすいし、公立の学校ならば寄付金を詰めば多少のわがままは通る。
いかに自分のブランドのイメージモデルとして双子を使いやすい環境を整えるか、が判断基準だ。
だが、双子からすれば、特別扱いする教師のおかげで悪目立ちして、もっぱら同級生からの攻撃の対象となる生活を余儀なくされてきた。お金を持っているからと、上級生から集られたこともしばしば。
そんな生活が嫌で、並以上の資金を持った生徒たちが集まる私立への編入を強行したことなど、リエには全く通じていないらしい。
いじめられて全身に怪我を負って帰宅したときでさえ、撮影に支障が出ることを怒られたのだから、双子はとっくに母親という存在に期待はしていなかった。
それでもリエの機嫌を損ねると、また地元の学校に逆戻りさせられるかもしれない。
葵と出会ったおかげで今までに体験したことのない楽しい学園生活を送れている双子は、絶対に転校なんて事態を招くわけにはいかない。
双子は早く葵のいる会場に向かいたい気持ちを必死にこらえ、また新たに渡された衣装に袖を通すのだった。
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