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act.2追憶プレリュード<7>
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歓迎会の初日は、翌日に控えた部活動の紹介イベントのための準備がメインとなっている。
文化部は宿泊施設内にある大小2つのホールに分かれ、明日の発表会のための本格的なリハーサルを始め出していた。
今は吹奏楽部の順番だが、最近流行りのJ-POPをアレンジしたものが演奏されている。いつも選曲されるのはクラシックばかりだが、この歓迎会だけはこうして少し砕けた楽曲で新入部員を誘い込むのが恒例となっている。
運動部は発表の代わりに、敷地内に併設されたグラウンドや体育館で試合を観戦させることになっている。だが、その試合形式は特殊だ。
例えばサッカー部なら、部内で部員同士の試合をするのではなく、サッカー部vsその他運動部の選抜チームとのゲームが行われる。各部は自分の部活のメンツを守るためにも絶対に負けられない戦いとなり、毎年異様な盛り上がりをみせるのだ。
今も明日の本番を前に、体慣らしのためのゲームがグラウンドで繰り広げられていた。
葵は明日の準備のために施設の様々な場所を周りながら、お祭り騒ぎのようになっている生徒たちの様子を眺めていたが、その光景とは裏腹に葵の心は沈んでいく一方だ。
入学式も始業式も、葵は生徒会の一員としてきちんと仕事をこなしきれなかったから、この行事こそはしっかりと職務を全うさせたい。そう思っているのだが、葵にはその自信がなかった。
進級して生まれた新しい環境は葵にとっては間違いなく楽しいものになっている。
でもほんの数週間前まで一緒にいた存在のことを事ある毎に思い出して、胸が苦しくなるのも事実だった。京介には相変わらず怒られてしまっているが、ただでさえ細い食が下降の一途を辿るのは止められない。
それに、葵を悩ませている種が今朝、もう一つ生まれた。
グラウンドの喧騒から離れ、生徒会の拠点となっている宿泊施設へと戻る道すがら、周囲を取り囲む木陰の一つに身を寄せた葵は、羽織っているカーディガンのポケットに忍ばせた封筒をそっと、取り出す。
真っ白な封筒の中には写真がただ1枚だけ入っていた。
紫のアネモネの花に埋もれるように寝そべる小さな子供。
身にまとっているのはシフォン素材の柔らかい白のワンピース。子供の肌はワンピースの生地に溶けるような程の白さ。
そして何よりも肩まで伸びた髪は、周囲のアネモネの色を反射させるほどの、白や銀とも言えない不可思議な色をしている。瞳も周りの色を取り込んで淡く紫に色づいていた。
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