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act.2追憶プレリュード<11>

「聖くんの同室の三年生は放送部の部長さんで、いつも生徒会のお手伝いしてくれる優しい人だよ」 まずはただでさえ吊り気味な目を細めて拗ねたような素振りを見せる聖に声をかけてみた。 放送部の彼はつい最近では入学式や始業式で、生徒会と共に裏方としてサポートしてくれた信頼のおける先輩である。 「爽くんはね、僕のクラスメイトと同じ部屋だよ。美術部の人でね、よく教室でもスケッチしてるんだ。歓迎会のしおりの挿絵も描いてくれたんだよ」 聖とは違い、拗ねるというよりも呆然としている様子の爽にはあまり慰めにならないかもしれないが、葵は分かる限りの同室者の情報を教えてやった。 葵の情報だけでは人物像はまだはっきりと見えてこないものの、危険人物ではないらしい。双子はそれだけでも多少の不安は拭われたような気がした。 でもそれ以上に気になることが生まれてきた。 「……もしかして先輩も誰かと…」 「同室なの?」 口にするのも恐ろしい質問を最後まで言えなかった爽の言葉を引き継いだのは聖だ。 だが、葵はあっさり首を横に振って否定した。 「ううん、生徒会は一人部屋なんだって。歓迎会の運営本部の場所も作るから、棟も別なの。寂しいよね」 双子が危惧した理由など葵にはさっぱり通じていないらしいが、それでも返ってきた答えは二人を安堵させるのに十分だった。 よくよく考えれば、あの生徒会や京介、都古たちが葵を一般生徒と同室にするわけがない。 今だって双子と共に部屋を目指して廊下を進む葵の姿を見つめる視線はとてつもなく多い。 双子自身にもその流麗な容姿や、モデルで鍛えられた身のこなし方のおかげで興味津々な目を向けられているが、男性ばかりの空間では圧倒的に葵のようなタイプが注目を集めてしまう。更に葵本人に全くの危機感がないのだ。 そんな葵を密室に放り込めば食べてくれと言わんばかりの状況になってしまうだろう。 「よく今まで無傷でしたよね。っていうか、あれ?去年ってまだ先輩、生徒会じゃなかったですよね」 「じゃあ去年は誰かと一緒だったんですか?」 ようやく辿り着いたエレベーターに乗り込みながら、聖と爽はある種無法地帯のような学園で葵が”お子様”なままで居られる理由を勘ぐってしまう。その中で生まれた疑問。 入学早々葵のことをリサーチした際、生徒会に特例で属したのは一年の半ば頃だったと聞いている。 特別待遇が許される生徒会に属していなかったのなら、去年こそは誰かと同室だっただろう、そう思ったのだ。

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