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act.2追憶プレリュード<12>
「うん、奈央さんと、去年の副会長さんと一緒だったよ」
「へぇ……って、生徒会は一人部屋じゃないの?なんで葵先輩と同室?」
「そういえば…そうだね。なんでだろう?」
聖の疑問に対する答えは葵にも出せないらしい。本当に経緯が分からないらしい葵は分かりやすいくらい唸っているが、双子にはその矛盾の理由を察した。
去年の生徒会が葵と無理やり同室になったか。それとも今年の生徒会が葵を誰かと同室にしないために “一人部屋”なんてルールを新たに作ったか。そのどちらかなのだろう。
“今度聞いてみる”なんて葵は言ったけれど、きっと納得の行く答えが本人にもたらされることはないように思えた。
「はい、こっちが聖くんの部屋の鍵。で、これが爽くんね」
エレベーターを降り、ようやく辿り着いた扉の前で葵がカーディガンのポケットからルームキーを2つ取り出し、それぞれの手の上に乗せてくれた。別室になってしまったとはいえ、二人の部屋は隣同士らしい。
「夕食は部屋ごと同じテーブルで食べることになってるんだ。だから一旦部屋で同室の先輩と合流してから行くんだよ?」
葵はそろそろ自分の役割は終わり、とばかりにこれからの予定を告げてくるが、双子はせっかく会えた葵と離れるのが惜しい。
引き止めるために、先程から微妙に感じていた訝しさを葵にぶつけてみることにした。
今日の撮影で双子の目印であるメッシュは完全に染め直されてしまい、全く見分けがつかないはずだ。実の親であるリエですら分かっていない。
なのに、葵は同室者を教えるときも、そして今鍵を渡すときだって完璧に見分けてみせた。
「「葵先輩、俺たちがどっちかなんで分かるんですか?」」
「え?どういうこと?」
「「メッシュないでしょ」」
「……あ、ホントだ」
双子に指摘されて初めて、葵は二人がいつもと少し様子が違うことに気がついたようだ。そんな反応にますます双子の疑問は深まるばかり。
「ってことは先輩、いつもどこで見分けてるんですか?」
「自分たちで言うのも何だけど、大分難易度高いですよ?」
一卵性の双子である二人は確かに瓜二つ。でも葵は特段意識して見分けていたわけではないから、答えに窮してしまう。
双子を今まで正確に見分けてくれたのは、この学園に編入することを勧めてくれたイトコぐらいだ。彼とは生まれた時からの付き合いだし、その彼だって未だに服装や場面によっては、間違えることだってある。
だからまだ出会って間もない葵が当たり前のように別人格として接してくれるが、不思議で、そして幸福で仕方ない。
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