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act.2追憶プレリュード<19>
「まさか、あいつにさっきされたのか!?」
「だから何を?」
「…………これ」
京介の心配に全く気が付かない葵に分からせるために、更に顔を近づけて軽く唇を奪ってみせた。すると、あっという間に頬が染まる。
「ちがっ、あの人には、されてない」
「……あの人、”には”?じゃ誰にされた?」
葵の腕が京介の胸に当てられ押し返してくるが、京介は失言を聞き逃さなかった。相変わらず近い距離のまま、しっかりと問いただす。
「誰?」
もう一度聞くと、葵からもたらされた答えは最近葵に付きまとい始めた双子の内の一人。いつも二人一緒に行動するから、なぜ片割れだけなのか気にはなったが、そこは重要な問題ではない。
「あの、ね、聖くんと爽くん、どっちか当てるゲームしてて」
「ゲーム、な。……ったくあいつらも油断ならねぇな」
京介にキスした理由まで尋ねられた葵は正直に答える。だが、京介は納得が行かないどころか、すでに葵を丸め込める術を身に着けた双子に対しての危機感を更に強めた。
「あんまり隙見せるなよ」
こうして言い聞かせるだけ無駄なのは京介だって分かっている。それに、隙がありまくるのを良い事に手を出している筆頭格は京介自身。
「こっち向いて、葵」
双子に触られたままにしておきたくなくて、もう一度葵を上向かせ今度はしっかりと唇を重ねる。
でも身長差がありすぎて立ったままでは葵にとって姿勢がかなり厳しいらしい。苦しいと言わんばかりに胸を叩かれて、京介が瞼を上げると涙目で眉をひそめる葵と視線が絡んだ。
それだけならいつものこと。止める気はなかったが、視界の端、渡り廊下の外の茂みが動いた気がして京介は葵から身体を離した。
そのまま葵を隠すように抱きしめ、そっと視線を茂みに移すとやはりそこには人影が見える。向こうは京介にバレたとはまだ気が付いていないらしい。
このまま覗きの正体を探るべく、京介はそもそもこの別館への渡り廊下に現れた理由を口にした。
「そうだ、葵。お前のこと呼びに来たんだよ。本来の目的忘れてた」
「何かあったの?」
「都古が部屋の風呂に立てこもって出てこねぇらしい。どうにかしろ」
移動する道中、幸樹が一緒に向かうことに散々文句を言っていた都古。更に到着してから葵は生徒会の仕事にかかりっきりで都古に全く構ってやれていなかった。
同室者が都古にとって全くの赤の他人であることもストレスになっているのだろう。
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