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act.2追憶プレリュード<25>
「葵が読む前に回収した。で、葵には中身はバスケの試合相手探しの相談って伝えといたから。辻褄合わせで出る。んで、ついでに叩きのめす」
「………わかった」
普通なら都古と同じく、行事に進んで参加するようなタイプではない京介の言い分にようやく合点がいった。そういう事なら協力してやってもいい。
「俺と幸樹はともかく、お前と綾瀬も動けるしまぁ負けはしないだろ」
「ちょっとななは?身長小さいからって馬鹿にしないでよ」
「やめなさい、七。ちゃんと座って」
京介の発言に対し、唯一名前を呼ばれなかった七瀬は京介の言葉に当然のように噛み付いた。
よく1対1のゲームを遊びがてらやっている京介と幸樹は元々の身体能力も高いが、バスケの技術も相当に高い。おまけにバスケ部に匹敵する長身の持ち主だ。
京介の言うとおり、都古と綾瀬も運動神経は良い。特に都古は団体競技に向かない性格ではあるが、スピードとバランス感覚がずば抜けている。
一方の七瀬は葵よりも更に小柄な身体。バスケ部と戦うには一見不向きな選抜に見えるのだが、京介は決して馬鹿になどしていない。
「お前にはバスケ部の常識を覆して撹乱させるっつー大事な役割があるから」
七瀬は身長は小さいものの、パワー・スタミナ・スピード、全て兼ね揃えている上に、予測不能の動きをする。ルールの範囲内ではあるが、バスケの定説の流れを無視したプレイをする七瀬に恐らくバスケ部は一番翻弄されるであろう。
京介はちゃんと勝算があってこのメンバーを揃えたのだ。
京介の言わんとすることがわかったのか、七瀬は一瞬滲ませた怒りをすぐに仕舞い込み、また目の前のハンバーグに向き合い始めた。
それを見届けた京介は、今度はまた真剣な表情に戻って都古を見据える。
「年度変わってからちょっと雰囲気緩くなってるな。葵から目、離すなよ都古」
「……生徒会、キケン、なのに」
「あそこに属してるからある程度葵は安全だし、引き離すのは得策じゃねぇって前も言っただろ?懐いてるしよ」
言われなくても葵から目を離す気などないが、生徒会に居る時は別だ。何が行われているか把握出来ない。
プレイボーイで名を馳せていた忍。始業式に葵に手を出した櫻。それに万年発情期の幸樹。いくら温厚な常識人の奈央が居ても、都古はこんなメンツが揃う生徒会に葵が居ることのほうが危険だと思う。
だが、京介の言いたいことはそうではないらしい。
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