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act.2追憶プレリュード<27>

「寝れる、かな。アオ」 食欲が削られている葵は夜もうまく寝付けなくなっているはず。都古はただ単に自分が甘えるために極力一緒に居たいと申し出たわけではない。 一人にした葵がどんな思いをするか、行動をとるか。心配だから一秒でも離れていたくないのだ。 「とりあえず、葵はこの歓迎会、成功させたいって意気込んでるから。お前はそれ叶えてやれよ。不満はあるだろうけど」 「……アオ、居ないの、ヤダ」 「去年お前が参加出来なかったから。今年は楽しませたいって思ってるの知ってんだろ?お前が一言”楽しかった”って言ってやりゃ葵は喜ぶよ。飼い主喜ばすのがお前の役目だろ」 目つきも口も態度も悪いが、京介は本質的に世話焼きだ。回り回って葵の為になるとはいえ、恋敵である都古の世話まで焼いてくる。 京介の兄も世話焼き体質で似ている。そんなことを思っていた都古はつい、本音を漏らしてしまった。 「……お節介」 「あ?てめぇなんつった」 兄と違うのは京介は見た目通り短気である、ということ。早速導火線に火が付いてしまった京介をよそに、都古はようやく運ばれてきた夕食に手をつけ始める。 京介が自分に暴言を浴びせているのが聞こえるが、もう頭の中は葵のことでいっぱい。 京介の言うとおり、葵を喜ばせるために歓迎会にしっかり参加したら、その時はどんなご褒美をもらおう? ”飼い猫を喜ばすのは飼い主の役目”。そんなことを思い始めた都古の表情は葵と共にいる時のように穏やかになっていた。

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