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act.2追憶プレリュード<32>

「あの、これは…?」 「ん?あれ、お客さんじゃなかった?もしかして具合悪くて来たの?」 具合が悪い以外に医務室に来る用事などあるのだろうかと戸惑った様子の葵に、橘もすぐに焦った様子を見せた。 それもそのはず。橘は学園の保健室でも、そして、この歓迎会中の特設医務室でも、普段寮生活を送っている生徒たちが手に入れづらいローションやら、オトナのおもちゃやら、ゴムやらをこっそり販売しているのだ。 てっきり葵がその客として来たのだと勘違いして接してしまったのだが、違ったと気がついて焦らないはずがない。 誤った性行為が蔓延しないよう、という建前はあるものの、お坊ちゃま相手にそこそこの値段で売りつけて収益を得るだけでなく、実演販売と称して客として訪れた生徒たちに手も出している。 そんな事実が生徒会役員である葵にバレてしまったら、それを学園の理事会に報告されてしまったら、橘の首は間違いなく飛ぶだろう。 「藤沢くん…このこと、内緒にしてくれない?」 「内緒って、何を、ですか?頭痛薬ほしくて来たんですけど…」 ストレートに交渉を持ちかけた橘だが返ってきたのは橘の焦りなどちっとも理解していないようなとぼけた返事。 もしやと思った橘は、目の前にある蛍光ピンクのローションを片手に葵に持ちかける。 「それならこれがぴったりだよ」 「え、これ頭痛薬なんですか?ボディソープかなぁって思ってました。飲むんですか?」 橘の期待以上に葵はまんまと騙されてくれる。もしかしなくても、葵がこの卑猥な道具の数々の使い道をさっぱり知らないことが明白になった。 本来どんな使い方をされるかなんて分からず、興味深そうに眺める葵を見て、それならば、と橘の悪い癖が出てしまう。 「藤沢くん、座薬って分かる?お尻から入れる薬のこと」 「え?あ、はい」 「これはね、その液体バージョン」 「へぇ…初めて知りました」 真相を知らない葵は、橘の言葉を真に受けて”最新の医療機器”に対して畏敬の念さえこもった視線を投げかけ始めた。 これはイケると確信した橘は、更に踏み込んでみることに決めた。 「じゃあ藤沢くん、そこに横になって」 「……えっ?」 「頭痛いんでしょう?処方してあげますよ、さ、早く」 葵がそうそうたるメンバーに愛されているのは周知の事実。てっきり色々と植え付けられているのかと思いきやこの反応だ。 俄然興味が湧いてきた橘は戸惑う葵をソファに押し付けて、手際よく身に纏った服を脱がしにかかる。 一方の葵は何が行われているのかさっぱり分からずに橘の手に翻弄されるばかり。元々ひ弱な上に、ここ最近少しやつれた葵にとっては自分よりも20センチほど大きな橘の手を遮る力など残っていない。 それに医療行為と思えば、”恥ずかしい”という理由で橘の手を拒むことこそおかしい気がしてしまうのだ。 だが、てきぱきと脱がされていくのを直視することは出来ない。葵はギュッと目を瞑ってひたすら早くその”医療行為”が終わることを願った。

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