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act.2追憶プレリュード<38>*

「あ……え、と…体温、はかって」 「体温?そういや体温計持っとったな」 言われてみれば幸樹が部屋に乗り込んだ際、橘はローションのボトルの他にガラス製の細い体温計を手にしていた。 「まさか……お尻に入れられたん?」 「そのほ、が、ちゃんと計れるって」 「あんの変態、クズ……羨ましいわぁ」 恥ずかしそうにしつつも素直に答えてくれているのだから、葵はそれが医療行為であると信じて疑わないのだろう。そんな美味しいシチュエーションで手を出した橘への罵詈雑言とともに、本音が最後にぽろりと漏れ出す。 「ぐちゅぐちゅに奥までかき回されたん?」 「や…先っぽ、だけ…そしたらいつのまにか、上野先輩が来てて」 「そか、ギリアウトだけど、それ以上遊ばれる前に防げて良かったわ」 なんの変哲もない言葉だが、“先っぽ”なんて単語すらこんな状況で葵からもたらされると卑猥に感じてしまう。 「ほんなら、中もぬるぬるなんちゃう?洗おっか?」 今はあくまで葵の尻を”洗う”という名目で撫で回し、時折弾力を確かめるように揉む程度。橘に腹は立つが、堂々ともう一歩踏み込んだ悪戯が出来そうなことに気が付いた幸樹の声はついつい弾んでしまう。 「あぁッ…や、だぁ」 “ここ”と指し示すように狭間の一点を突いて見せれば、葵からは今までで一番大きな声が上がった。そして自分の声に驚いたように幸樹の肩から顔を上げて、ぱちぱちと目を瞬かせている。 でもただ触れただけでイイ反応を示してくれた葵を目の当たりにして手を止めるなんて間抜けなことはしてやらない。 「ん、んッ…ぁン」 「かわええ声、もっと聞かして」 狭間にこびりついたローションを取り除くように指を行き来させ、蕾を通過するときだけ、グイと強く力を入れる。それを繰り返すと、葵からは動きに合わせた嬌声がリズムよく上がりだす。 幸樹にしがみつく腕の力も合わせて強くなる。きっと支えがないと崩れ落ちてしまいそうなのだろう。 「ココ、つんつんするだけで気持ちええの?耳まで真っ赤にして。なーんも知らんくせにやらしー子やな」 敏感な粘膜とはいえ、幸樹はあくまで触れているだけ。泡と粘液が混ざり合ったせいでぐちゅぐちゅと上がる音は大きいが、実際音ほど卑猥なことはしていない。 どうやら性知識は皆無なくせに体ばかりが性的な刺激に敏感に仕立て上げられているらしい。

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