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act.2追憶プレリュード<62>
「さびしかった、だけ」
「嘘つけ」
「……ほんと」
探るように覗き込めば、葵は逃れるように目を逸らす。嘘をつくのが本当に下手だ。呆れるがこういう部分も含めて愛している。
「きょ、ちゃん…一緒に、寝たい」
胸に抱えていることを全て打ち明けてくれないくせに、こうして甘えてみせる葵にはずっと翻弄され続けている。
「ガキ」
葵の希望通り、自分の体にすっぽりと収まるほど小さな葵を抱きしめたままベッドに横になった京介はそう小突いてみるけれど、心底安心したように擦り寄ってこられるだけ。
「ったく、人の気も知らねぇで」
さっきあれだけ口付けを交わしたのだから京介のほうは、もっと葵に触れたくて仕方ない。でも葵のほうはすっかり京介の腕の中で丸まってくつろいでしまっている。愚痴をこぼしたくなるのも無理はなかった。
「京ちゃん、もっかい、おまじない…して?」
京介の気持ちを知ってか知らずか、見上げてきた葵がそんな望みを口にする。
“おまじない”とは葵が悪夢を取り払うため、という口実で仕込んだ嘘。実際、この”おまじない”を理由に葵には色々と手を出してきている。
でも葵は未だにそれを信じて頼ってくるから、今更この行為が本当は何なのかを教える機会を完全に失っているのは後悔していた。
「どこにする?」
腕の中に閉じ込めたまま、葵の上に覆い被さるような体勢をとった京介は葵の願いを聞いてやる覚悟を決めた。
「ん、ぜんぶ」
「お前ほんとに…いつか覚えとけよ」
邪気のないくりくりした目に見上げられた京介はそう文句を言いながらも、先程よりもより深い口付けを落とす。
キスの間、葵のパジャマのボタンを外していく動きは無骨な手に似合わず優しい。
唇の次は耳、そして首筋を通って胸元へ。
“おまじない”のいつものコースを辿っていくにつれて、京介だって己の欲望が湧き出てきてしまうが、あくまで葵の眠りを促すための行為。自分を信頼している葵を乱暴に抱くことなど出来ない。
「あぁ…くそ、早く寝て、葵」
自分が開発してしまった自覚はあるが、幼いくせにどこを触っても敏感な体が恨めしい。触れるたびに可愛く鳴く葵に、京介はただただ早く穏やかな眠りに付いてくれることを願うのだった。
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