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act.2追憶プレリュード<74>
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体育館は異様な程の人だかり、そして異様な熱気で満ちていた。
それもそのはず。これから行われるバスケ部の試合に対戦相手として京介が名乗り出たのだ。それも異色のメンバーを引き連れて。
たちまちその話は生徒たちの間で広まり、純粋に部活見学をする新入生だけではなく多数の野次馬が集まる結果となった。
しっかりとユニフォームを身に着けているバスケ部チームとは違い、京介が引き連れているメンツは準備不足で皆バラバラな出で立ち
京介は寝間着代わりにしているスウェット。幸樹はそもそも歓迎会にすら来る予定がなかったのだから、派手な色のシャツにデニムなんていう私服姿。綾瀬と七瀬は制服のスラックスにTシャツを重ねていた。
そして何より異彩を放っているのは一人だけ裸足で浴衣姿の都古。
他のメンバーだって体育館でスポーツするつもりなんて毛頭なかったのだから、私服に合わせるために持参したスニーカーの底を綺麗に磨いて乗り込んでいるのだが、都古だって制服時のローファーか草履の二択はあったはず。
でも彼は裸足が一番動きやすいから、と頑なに裸足にこだわった。
一見してチーム全体の統率は取れてないのは明らかだ。
「勝負すんのは構わないけど、俺らこの地区ではそこそこ強いのってわかってる?」
今までバスケ部に勝負を挑んできたのは、バレー部やサッカー部のエース達で組まれたチーム。それが運動部ですらない京介達に勝負を挑まれてはバスケ部のプライドも形無しらしい。
軽くストレッチをしながら京介に話しかける部長の表情は険しい。
「別に。俺は売られた喧嘩、買っただけだけど?」
対する京介はそう答えながら、部長の傍に控える三年の生徒を睨みつけた。彼は昨日葵に手紙を渡し、告白しようとした人物。
「なに、安達。喧嘩って」
「いや、俺はただ…」
部長に咎めるように問いただされた彼、安達は観客席の最前列に座る葵に視線をちらりと投げかけた。
安達だってただ葵に告白しただけなのに、こんな事態に発展した経緯を理解できていなかった。ただ分かるのはあのラブレターを葵が京介に読ませた、ということ。
ずっと恋していた後輩に恥を忍んで二度目のアタックをかけたというのに、直接ならまだしも、こうして他の男を使って振られるなんて屈辱的で人知れず唇を噛んでしまう。
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