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act.2追憶プレリュード<75>
「そろそろ始めるぞー」
バスケ部の顧問でもある体育科の教師の呼びかけで両チーム、コートのセンターに集まった。そのスタメンの中には当然安達も居る。
試合は教師が放り上げたボールを、それぞれのチームが選抜したジャンパーがタップすることで始まる。
真ん中に立つ教師を挟むように並んだのは安達と、そして京介。
「センパイ、俺らが勝ったらうちの葵さんに二度と手出すなよ」
安達のアタックは去年は魔王、西名冬耶に阻まれ、今年はその弟、京介に邪魔される。葵にアタックするにはまずこの西名家を倒さなければならない。
ニコリと不敵に笑う京介には、バスケ部に負けるわけがない、という自信に満ち溢れていた。
「京ちゃん!がんばって!」
野次馬のざわめきを割ってコートに届いたのは葵の声援。それを受けるのはもちろん京介だ。
「上野先輩も、みゃーちゃんも、ななちゃんも、あやくんも、皆がんばってね」
はしゃいだように皆に両手を振る葵の表情は期待に満ちている。彼らが勝つことを信じて疑わない様子。その視界にはバスケ部側は映っていないようだ。
始まった試合は最初こそバスケ部側が有利だったものの、この不可思議なチームが互いの役割を認識し始めてからは徐々にバスケ部を追い詰めていく。
特攻隊長のような七瀬がバスケ部の輪を乱したところで、都古が華麗にパスカットを決める。そして頭脳派の綾瀬へとボールを回すと、綾瀬は状況を判断して京介か幸樹、そのどちらかに的確なパス出しをはかる。
受け取った京介、幸樹は長身と技術を活かして一本一本着実にゴールを重ねていく。
第二クォーターが終わる頃には両チームの点差は京介チーム優勢で10点ほど開いていた。試合は本来第四クォーターまで行われるが、あくまでこれは簡易的なもの。
予定ではここで終わりのはずだったが、負けたままでは居られない、とバスケ部側が延長を申し出た。
「どうする?」
額に滲んだ汗をタオルで拭いながらチームメイトを京介が見やると、都古以外は承諾の頷きを返した。
都古だけは早く終わらせて葵に甘えたいと言いたげに不満そうにするが、多数決には敵わない。結局ハーフタイムを挟んで試合が継続されることが決定した。
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