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act.2追憶プレリュード<122>

「ということは、今の環境はお前にとってはチャンスなんだな」 ようやく京介にとってはある意味邪魔者でもあった冬耶と遥の姿が学園から消えた。忍が言うように、たしかに強力な二人が居なくなって、葵が一番に頼る相手が京介という状態は”チャンス”だろう。 「で、葵ちゃんとラブラブしようと思ったら、どこのどいつか分からない奴に告白先越されて苛ついた。そういうこと?」 「分析すんな。ちげーよ」 面白そうに笑われて京介は即座に否定したが、ある意味櫻の言う通りである。 違う所は京介を苛立たせているのが安達のことだけでなく、冬耶と遥が抜けた分、目の前にいる忍や櫻を始めとする生徒会メンバーや、聖と爽なんていう新入生が葵の大事な人になりつつあるということ。 それに葵が京介の思う以上に冬耶と遥が卒業したことで精神的なダメージを負っていることだった。 二人が傍に居られなくなる分、京介は自分が葵の心の隙間を埋めてやれる自信があった。そういう付き合いをしているとも思っていた。 でも昨夜自分の体を傷つけてまで寂しさを堪えているという事実を目の当たりにして、その自信も崩れてしまう。 「西名さんと、似てないな」 忍が何気なく漏らした一言が更に京介の苛立ちを煽った。生まれた時から傍に居て、ずっと追い越すことの出来ない存在。 ついカッとなった京介が、さっき都古を止めたというのに今度は自分が忍に掴みかかろうと席を立った、その時だった。 ノックもなしに半ば乱暴に部屋の扉が開けられ、その場にいる全員が一斉にそちらに視線を向ける。駆け込んできたのは顔を青ざめさせた奈央だった。 「どうしよう、葵くんが、居ない」 奈央が息を切らせて告げたのはその場の全員を驚かせる事実。奈央が冗談でそんなことを言う人間じゃないことは皆が知っている。 「アオ!」 誰よりも早く部屋を飛び出したのは都古だった。今までソファでぼんやりとしていただけだというのに、覚醒した獣のようにあっという間に姿を消してしまう。 「居ないとはどういうことだ?」 「寝てたんじゃないの?葵ちゃん」 奈央に事実確認をしようとする忍と櫻は、都古と比べれば幾分か冷静だった。

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