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act.2追憶プレリュード<155>

* * * * * * 歓迎会の最後のイベントが終わり、会場となったホールは既に生徒が退出し始めていて、閑散としていた。残っているのは生徒会役員や放送部員の他、行事をボランティアでサポートしていた生徒たち。 その中で異色の存在感を放っているペアを見やりながら、忍は人知れず溜息を零す。 「こうして手伝うくらいなら役員になればいいだろう」 忍の視線の先には、率先して片付けを手伝う綾瀬と七瀬の姿。彼らは葵の代わりとして働くことを名乗り出てきたのだ。 「あくまで葵ちゃんの代わり、なんでしょ。まぁ助かってるのは事実だし、いいんじゃない?」 忍の言葉を受けて、隣に控えていた櫻がそう返してきた。 彼は音楽一家の長男であることを盾に、”手を大事にする”という目的のもと重い物を運んだり、手が荒れるような水仕事は一切行わない。 葵の代わりに櫻がもう少し働けばいい、そんな本音を漏らしてしまうと面倒なことになるのはよく分かっているから、忍は彼の言葉に反論はせず大人しく受け流してみせた。 それに金だけはいくらでもある学園では、最終的な清掃はきちんと業者を入れて行う。だから忍はそれ以上この場に留まることはせず、葵が待っているはずの別館へと一刻も早く戻ることに決めた。 「え、なに、帰るの?」 「あぁ、葵に会いたい」 「……忍ってさ、自分ではちゃんとしてるって思ってるところが厄介だよね」 もう葵に会うことしか考えられない忍の様子に、櫻は心底呆れたような声を出してくるが、これには一言物申したい。 「仕事なら終わらせた」 「そういうことじゃないって。まぁいいや、帰ろ」 含みを残した言い方は気にかかるが、櫻も忍と同じく、葵に会いたい気持ちは同じらしい。むやみに会話を続けることはせず、共に葵の待つ場所へと足を向けた。 忍と櫻、二人が揃って歩いていれば、まだ敷地内をうろついていた生徒たちの多くが熱い視線を送ってくる。 前年度の冬耶は男前ではあるが、身なりも派手で非常に癖の強い人物。慕われてはいたものの、通例通り一般生徒とは一線を画した高値の花のようなタイプの人物に統治を求める者も多かった。 そんな者たちからすれば、忍と櫻のコンビは理にかなっているのだろう。“生徒会”という組織自体を美化し、崇拝さえしているグループさえ見受けられる。 「ああいうの、やめさせたほうがいいかもね」 視界に映るのさえおこがましいと言わんばかりに深々と頭を下げてくる団体を横目に見やりながら、櫻がそんな事を言い出した。 見た目も振る舞いも、気高いクイーンの名にふさわしい彼は、人から頭を下げられることを心苦しく思うような愁傷な性格はしていない。

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