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act.3君と星の世界へ<18>
手始めに担当医の項目を開いてみれば、そこには確かに宮岡という名前がある。掲載されている写真の中に居たのは京介の予想以上に若い青年だった。確かに若いとは聞いていたが、彼はどう見積もっても三十手前に見える。
短く整えられた黒髪と、にこりとこちらを向いている笑顔は快活な印象を与えるから余計に若々しく見えるのだろう。
“おしゃべりしに行く気軽さで”、そう紹介された通り、確かに人懐っこそうな彼なら葵も素直に打ち解けることが出来るかもしれない。そう思わせた。
診察日の案内を見れば、明日は午前中までなら診察が行われていることが分かるが、その下には完全予約制であることが赤字で記されている。
きっと前日の夜に連絡したところで予約など取れるわけがない。諦めかけた京介だったが、その下に24時間問い合わせを受け付けると添えられたメールアドレスが載せられていることに気が付いて画面をスクロールする手を止めた。
メールを送るぐらいならハードルは高くない。
早速、簡単な相談事項と自分の名を添えてメールを送れば、ものの数分で宮岡本人から返信が戻ってきた。あまり長い時間は取れないと前置きの上ではあったが、是非明日おいでという気さくな内容だった。
自分の手で葵の心を回復させてやりたい。そう思うが限界がある。それは歓迎会中に葵が起こした行動で痛いほど思い知った。
誰からでもいい。せめて葵が自分自身を少しでも大切に出来るように成長するヒントが欲しかった。
「葵、泣くかな」
携帯をまた枕元に放った京介は、勝手に予約を取ってしまったことで感じる不安を口にした。
「嫌ならやめるから、泣くなよ」
眠り続ける葵にこんなことを告げても無駄かもしれないが、言わずにはいられない。
すると呼応するように葵が身動ぎをした。形の良い眉がキュッと寄せられ、抱きしめた体が不規則に震えだす。それは葵が悪夢に足を踏み入れ始めた合図だった。
葵の小さな手が彷徨うように伸ばされ、すぐ近くにあった京介のTシャツを見つけキュッと握ってくる。落ち着かせるようにその手に自分の手を重ねてやれば、今度はその手を必死に掴んできた。
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