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act.3君と星の世界へ<22>*
「わかった、両方な」
「ちがっ、待って…ちがうの」
葵の拒絶は口ばかり。幼い体で受け止めきれない快感のやり場に困ってすぐに逃げたがるだけ。葵の本気の”イヤ”とそうでないものの区別を付けることなど京介には容易い。
だから京介は身をかがめ、自身の手で捉えたままの葵の先端の蜜を掬うように舌を這わせた。
「あぁっ、あっ……あっ」
「声、押さえてな」
あまりの刺激に高い声を上げる葵を咎めれば、ぐずぐずに溶け始めた頭でも理解したのか、手の甲を唇に押し当ててこらえてみせる。
素直な葵を褒めるように先端を舐めるだけではなく、口に含めば、また先走りが溢れてきた。指を根元に巻きつけて絞るように上下に揺すれば、さらに透明の蜜がトクトクと止まらなくなる。
「……ん、あッ…あ」
華奢な、けれど柔い葵の内腿がキュッと堪えるように京介の頭を挟み込んできた。空いた手を伸ばして胸の尖りをひねったせいかもしれない。
弱い部分を的確に刺激してやれば、もう葵はこの行為の発端となった悪夢のことなど、ドロドロに溶かせてどこかへ蒸発させてしまったようだった。
ダメ押し、とばかりに更に喉奥へと誘い込み、先端を吸い上げれば、葵は呆気なく精を放ってみせた。これでも我慢出来たほうだろう。
けれど、いつもと違うところはまだある。達してしまえばあとはぐったりと眠りに付けるはずの葵が、今夜は京介を更に求めるように手を伸ばしてくるのだ。
「きょ、ちゃん……おまじない、効かない。足りないの、かな」
蕩けた口調で危険なことを平気で言葉にする幼馴染にはほとほと呆れてしまう。それに、いつもなら葵が寝付くのを見守ってから、ようやく高ぶった自分を慰めることが出来るのだ。延長戦をねだられれば、京介の苦悩は長引くことになる。
「お前さ、俺の我慢強さに感謝しろよ、マジで」
キス一つで照れまくるくせに、平気でそれ以上の行為を無自覚ながら求めてくる。十年片想いをして尚、この拷問に耐えられるのはきっと自分以外にいない。
これは”おまじない”なんて教えた自分への罰なのだろうか。信心深くはない京介でも、ついそんなことを思ってしまう。
「きょう、ちゃん」
完全に覚醒せずに、夢と現実の狭間でふわふわと漂い続ける葵にもう一度呼ばれれば覚悟を決めざるを得ない。
京介は深く溜息をついて高ぶる体に待機を命じると、葵の体に覆い被さったのだった。
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