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act.3君と星の世界へ<25>

“面白い”と表現されるのは少々心外だが、いわゆる世間の常識から大きく外れた人物が北条家に揃っていることは自覚している。 けれど、奈央の言うとおり、家族仲は悪くない。といっても互いに過干渉せず、ただドライな付き合いをしているだけだと思っているのだが、奈央曰く各々の性格を良く理解してうまく付き合えている、その状態が”仲が良い”のだそうだ。 「で、忍は何してたの?」 奈央は出会った際の問いかけを忘れていなかった。 改めて聞かれた忍は、幸樹とは自分以上に親しい奈央に告げることを少しだけ躊躇ったが、彼の前にあの紙を差し出した。 「これ……幸ちゃんが?」 「あぁ、今朝ここに呼び出されてな」 やはり奈央も幸樹の決意を知らなかったらしい。書類に目を通した彼は目を丸くして驚き、そして初めて周囲に点在していた幸樹の持ち込んだ私物がなくなっていることに気が付いたようだった。 幸樹のもの、と言っても大した物ではない。大抵が仕事をサボるためのくだらない遊び道具ばかり。わざわざ持ち帰るべきものでもないのだが、それが余計に自分の痕跡を全て消そうとする固い意志の表れのように思えてしまう。 そして、彼が持ち込んだボードゲームについ全員がつられて熱中し、会議が台無しになった思い出も蘇る。 どんなに普段彼をこき下ろそうが、やはりこの空間に居るべき人間だ。そう認めざるを得ない。 「どうするの、忍」 「連れ戻すしかないだろう。葵が悟る前に、な」 「そうだね。葵くんが知ったら、きっと責任感じるよ。幸ちゃんと会わないこと、すごく気にしてたから」 忍が宣言すれば、奈央もすぐに同意してくれる。幸樹が葵との接触を避けて生徒会を辞めれば、葵が傷つく、それだけではない。ただでさえ少ない役員をこれ以上減らしては、今以上に葵の負担が大きくなるのは目に見えていた。 けれど、ふと、この場に居ないもう一人の役員の存在を思い出す。 「櫻は、このまま辞めさせろと言うだろうがな」 誰に対してもツンとした態度を取る櫻は、対幸樹になるとそれにより冷たさが混じる。忍が幸樹をぞんざいに扱うのは、そんな櫻の態度に便乗して面白がっているだけだ。 「でも、櫻は嫌いなら口も利かないよ。幸ちゃんのことは何て表現したらいいかわからないけど、とにかく嫌い、ではないと思う」 奈央は少し自信なさげだが、忍もそれには同感だった。 的確な表現は浮かばないが、櫻は幸樹に対してずっと怒っている、そんな風に見える。それが何故なのか、おそらく櫻に理由を尋ねても素直に打ち明けるはずはないだろう。

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