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act.3君と星の世界へ<26>
「そういえば、いつ葵とデートするんだ?」
これ以上当事者が居ない中での会話は無意味だろう。忍はこの時間を切り上げるついでに、ふと思いついたことを口にした。
歓迎会中、既に奈央と葵が出掛ける約束を結んでいたことを知ったのだ。あれから二人がそれについての会話をしているところを見かけなかったが、ずっと気になっていた。
「デ、デートじゃ、ないから!冬耶さんも一緒って言ったよね」
どうやら忍の杞憂だったようだ。たかが”デート”という単語に過剰反応して赤くなる友人が、葵に手出し出来るわけがない。それに、保護者同伴では”デート”とは呼べないだろう。
「で、いつ行くんだ?」
「明日の予定。……もしかして、来るつもり?」
「いや、葵には会いたいが、西名さんには会いたくない」
不要な警戒を見せた奈央にはっきりと告げれば、心なしか安堵した表情を浮かべてくる。
デートではない、と言い切ったくせに、葵との時間を邪魔されるのは嫌だったのだろう。それこそ奈央が葵に好意を抱いている証拠なのだが、本人はあくまで”弟みたい”だと言い切る。一人っ子で兄弟が居る気持ちなんて分かる訳がないくせに、だ。
「忍って冬耶さん苦手だよね」
「苦手ではない。嫌いなんだ、何を考えているか分からない人種は」
完璧をモットーとする忍に”苦手”があってはならない。奈央の言葉を全面から否定しつつ、忍は冬耶への本音を吐露した。
「何を、って冬耶さんは葵くんのことしか考えてないよ、基本」
「……そういうところだ。嫌になる」
いたって真面目にブラコンっぷりと告げてくる奈央に、忍は溜息混じりに言い返してみせた。
彼が悪い人間だとは忍だって思わない。見た目に反して善人を地でいく彼を本気で嫌う者が居るとすれば、相当にひねくれ者だ。
忍が冬耶を本気で嫌悪しているわけではないことを悟っている奈央は、そんな様子にまた小さく吹き出したようだった。
「まぁいい。明日なら好都合だ。葵に残りの連休の空きを聞いておいてくれ」
「自分で聞きなよ」
「携帯を持たない葵にどう聞けと?」
「冬耶さんとか、西名くんの連絡先は知ってるよね」
奈央を駒のように使おうとすれば、当然のように拒否される。彼は穏やかだが、意志が弱いわけではない。
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