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act.3君と星の世界へ<28>

* * * * * * ぺちぺちと頬を叩かれる感触で、葵は心地の良い夢から現実世界へと引き戻された。重たい瞼をなんとか開けば、空色のカーテンから朝日が差し込んでいる。 朝日、といってもベッドサイドに置かれていた時計は、朝と昼の中間の時を指し示していた。 「……遅刻しちゃう」 「だから何度も起こしたっつーのに。お前全然起きねぇから」 慌てて飛び起きれば、ベッドサイドで葵を見下ろす京介からは呆れたようにそう言われた。京介は部屋着のスウェットではなく、既にTシャツとデニムに着替えている。寝坊したのは葵だけのようだった。 「何の夢見てたんだ?にやにやしてたけど」 まだ完全に眠りから覚めきらない葵が目を擦っていると、京介が少し意地悪な声を出してきた。けれど、少し寝癖のついた葵の髪を梳いてくる手は優しい。 「え?なんだっけ……あ、そうだ。みゃーちゃんが出てきた気がする」 「都古が?」 「うん。補習が終わって、一緒にお昼寝してたの」 覚えている限りの夢の内容を打ち明ければ、京介が少しだけ眉をひそめた。 「誰のおかげで寝れたと思ってんだよ。夢の中で寝る相手が都古っておかしくね?」 「いッ…やめ、て」 キュッと咎めるように頬まで抓られる。きつい痛みはないが、それでも痛いものは痛い。葵が京介の手を掴めばすぐにやめてはくれるが、拗ねたような表情は変わらない。 「なんで怒ってるの」 「自分の胸に聞け、馬鹿。……早く着替えて降りてこい」 理由を説明してくれない京介は、そう言い残して部屋を出ていってしまった。仕方なく、指示通り葵は自分が眠りについた時の事を思い出し始める。 リビングで冬耶にくっついて眠ったはずが、気が付けば自室で京介の腕に抱かれていた。なぜ目を覚ましたのか。その記憶も蘇る。 おつかいの途中で声を掛けてきた男が告げてきた言葉のせいで、溢れてきた過去の思い出。それがまさしくそのまま夢として現れたのだ。うなされて目を覚まし、そして目の前に京介が居て……。 「……あ」 そこまで思い出して葵はその後何が行われたのかもようやく気が付いた。 ”おまじない”はいつも気が付けば始まっている。寝起きの頭が冴えてくる頃には抗えない状態になっていて、そしてまた脳までぐずぐずに溶けていき、結局また眠りに堕ちてしまう。 昨夜もそうだったが、いつもよりも”おまじない”の時間が長かった気がする。最中は溶けた頭でロクに判断出来ないが、こうして冷静になると途端に恥ずかしさが込み上げてくる。 耐えきれずにタオルケットを被って丸まりジタバタと照れをやりすごしていれば、あまりにも階下に現れない葵を訝しがって迎えに来た京介に再度頬を抓られてしまうことになった。

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