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act.3君と星の世界へ<49>

「でも教えてあげないと、仲間外れだって拗ねるよ、京介」 「分かってる。奴との話が済んだら話すさ。あいつにも知る権利がある」 陽平も冬耶の懸念は見越しているようで、明日の面会後きちんと京介とも会話することを約束してくれた。 「きっかけは分からないけど、あーちゃん”パパ”のこと思い出し始めてる。これってただの偶然かな?」 「どうだろうな。……あぁ、本当にあの子がうちの子として生まれてこれたら良かったのに」 「俺もそれ、何度思ったか分からないよ」 頭を抱えてうなだれる陽平に、冬耶は共感を示した。けれどそんな仮定の話をしても意味がない。 冬耶はなだめるように陽平の肩を叩くと、一人で自分の帰りを待っているだろう葵の元へと急いで帰っていった。 「おかえり、お兄ちゃん」 「お、ちゃんと起きてたね」 部屋へと戻れば、ベッドの上に無数に置かれたクッションに頭を預けた葵が嬉しそうに手を振ってきた。予想に反して葵はまだ眠りについてはいない。 眠れていない原因はすぐに分かった。冬耶がベッドサイドの棚に並べていた卒業アルバムを開いて眺めていたのだ。 「何見てんの、あーちゃん」 覗き込めば、案の定葵が開いているのは生徒の顔写真が並ぶページだった。けれどそれは冬耶のクラスではない。 「まーたはるちゃん見てたんだ?」 「うん、写真見てるとちょっとだけ寂しいのが治まるの」 遥の映るページをじっと眺めては切ない顔をする葵がいじらしい。こんな卒業写真ひとつで健気に耐えるなんて可哀想で仕方がない。 「でもお兄ちゃん帰ってきたから大丈夫。もう寂しくないよ」 こんな風に懸命に笑顔を作ってくるのも堪らない。思わず抱き締めれば葵からも遠慮がちに手が回ってくる。そして葵は冬耶が予期しなかった言葉を口にした。 「お兄ちゃん、元気ない?」 恋愛ごとには鈍い葵も、こうした心情には敏感だ。京介が動揺することを心配していたはずなのに、冬耶自身が葵に察されるとは不甲斐ない。 「だって、あーちゃん、お兄ちゃんよりもはるちゃんのこと好きみたい。妬けちゃうよ」 誤魔化すように笑って見せれば、葵もそれにつられて微笑んでくれる。白い額に口付けて、華奢な体を腕に閉じ込め、ようやく冬耶の気持ちも安定した。 ────絶対に奪わせない 葵自身も。そしてこの笑顔も。それを再び壊すものが現れたら次こそ容赦しない。あの頃無力だった子供ではもうないのだ。 「明日なっちと何食べようか?」 心とは裏腹に、冬耶はそうして明日の計画を立てようと誘いを掛けた。せめて自分と居る時はこの笑顔を絶やさないように、そんな願いを込めて。

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