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act.3君と星の世界へ<56>
「なんだよ、その目。事実だろ?」
「悔しかったら俺らにすら勝てない頭を恨めよな」
彼等の分かりやすい挑発に乗って睨んだつもりはない。元からきつい目をしているだけで、普通に見やったつもりだ。けれど、どうであれ都古に絡むつもりだったのだろう。
血の気の多い彼等は席を立ってこちらに寄ってきた。
「全教科ビリなんてありがたいよ、ミヤコちゃん。この調子でよろしく」
「触んな」
ゲラゲラと笑われながら肩を叩かれて、思わずその手を払う。葵以外に体を触れられるのは不快で仕方ない。出来るだけ無視を決め込もうとしたのだが、他人の体温を感じて込み上げる悪寒をやり過ごすほど鈍くはなれない。
「いってーな。暴力振るわれたって葵ちゃんにチクっちゃおうかな」
「……やめろ」
ただでさえ心配ばかりかけている自分が問題を起こしたとあれば、葵を悲しませてしまう。それを止めるために今度は意思を持って睨みつける。すると、わざとらしく都古が跳ね除けた手を擦っていた生徒の顔色が変わった。
「なぁ、お前ネコ出来るって噂マジ?葵ちゃんとヤる時はどっちなの?」
「葵ちゃんがタチとか想像つかねーだろ」
「だな。じゃあ両方できる好き者のミヤコちゃんに俺も相手してもらおっかな?」
都古が身につけているワイシャツの襟首を掴んで下卑た声を浴びせてくる生徒に、もう一人の生徒が大げさなぐらい笑い声をあげる。
彼等の言う”ネコ”が、葵のペットとして自ら名乗っている意味として、ではないことぐらい理解出来る。
家と疎遠になった理由をつい思い起こしてしまった都古は先程よりも強く彼の手を振り払った。葵がネタにされるのも許しがたくて、彼の手を掴む際に少し爪も立てる。
すると今度は遊びではなく本気で痛がる彼の表情を見て、相方のスイッチが入ってしまったらしい。
「役員と仲良いからってあんまり舐めた態度取んなよ。マジで犯すぞ」
今度は相方のほうが都古のシャツの胸ぐらを掴んで捻り上げてきた。犯すという言葉だけでなく、ボタンが弾け飛んだシャツから覗く都古の首筋に、値踏みするようなじっとりとした視線を送ってさえくる。
だが、都古が彼を蹴り飛ばそうかと思い始めるよりも先に、悲鳴とともに彼の体が跳ね上がる。
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