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act.3君と星の世界へ<59>

「お前らより、強いけど」 食事を再開させた都古は、双子への正直な感想を返す。本当にただ、相手をするのも億劫なだけであの程度の二人組ならまとめて戦っても間違いなく勝てる自信はあった。 「「そうでしょうね」」 双子も揃って肯定の頷きを返してきた。都古の身体能力の高さを目の当たりにしている彼等が、それを否定することなど出来ないのだろう。弱いと言われても特に気にした素振りもなく、相変わらず涼しい顔をしている。 「自分の、心配…すれば?」 上級生に喧嘩を売って双子が今後絡まれないとも限らない。特にあの二人組は、葵や京介が傍に居ない隙を狙って都古にしつこく絡んで来る粘着質なタイプだ。ターゲットが双子になる可能性も十分にあり得る。 普通なら双子がどうなろうと構わないのだが、その原因に自分が少なからず関与しているとなれば、気分は悪い。それに万が一それが葵にバレた時に叱られるのも嫌だった。 「え、烏山先輩俺らの心配してくれてるんですか?」 「なんだー先輩もいいとこあるじゃないっすか」 ただそんな思いで口にした言葉に、双子はなぜか途端に目を輝かせてきた。しかし親しげな視線を送られても困る。あくまで都古は自分の保身のために言っただけなのだ。 けれどまた二人揃った声音でこんな事を返されれば、真正面から斬り捨てることは出来ない。 「「俺らも慣れてるんで」」 にっこりと形よく歪んだ唇。けれどそこには双子の抱えるものが垣間見えた気がした。彼等が高等部から編入してきたこと、そしてそれ以前の話を一切しなことと何か関係がありそうだ。 少しだけ彼等に対する態度を和らげてやっても良いかもしれない。珍しくそう思った都古だったが、その考えはすぐに引っ込むこととなる。 「あ、そうだ。今度何か強い技教えてくださいよ」 「いいね、一発で落とせそうなやつ」 「……やだ」 葵を狙う双子と親しくなるつもりは毛頭ないというのに、彼等はどんどん距離を詰めてくる。嫌気がさした都古は、早く葵に会いたいと、そればかりを再び考え、残りの食事を詰め込むことに集中するのだった。

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