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act.4哀婉ドール<92>

* * * * * * 連休中の食堂は閑散としている。生徒会というだけで嫌でも注目される立ち位置にいることを自覚している奈央は自室で食事を取ることも多いのだが、こうして人気のない夜は食堂へと向かう気になれる。 しかし天井の高い食堂へと足を踏み入れた瞬間、奈央はすぐにこの選択を後悔することになった。 「奈央さま!」 自分のファンを名乗る同級生の福田未里と鉢合わせてしまったのだ。彼は食事を終えて帰るところだったようだが、奈央と遭遇したことですぐに取り巻きを置いて奈央の元へ駆け寄ってしまう。 「これからお食事ですか?召し上がるもの決まっていたら席まで運びますよ」 「いや、いいよ。自分で出来るから、気にしないで」 「でも……」 こうして構われることが嫌だから普段この場に来ないということを察してくれないらしい。はっきりと断ってみたものの、目の前で残念そうな顔をされればこちらが悪いことをしているような気がして居心地が悪い。 だが、更に背後から声を掛けられて、奈央は後にも引けなくなってしまった。 「「高山先輩?」」 二つ重なる声の主は振り返らなくても予想が付いた。 「今飯?遅いっすね」 「俺らも今からなんです。一緒に食べません?」 少し吊り目がちのせいで生意気そうに見えるが、彼等、聖と爽が案外人懐っこい性質であることは歓迎会で知った。あれから校舎や寮ですれ違うたびにこうして親しげに話しかけてくるようになったのだ。 「その人、先輩の連れ?」 「あぁ、いや……」 「腹減った、早く行きましょ」 二人は奈央の前に立ちはだかる未里を見て一瞬興味を持ったものの、食欲が勝るのか注文カウンターへと向かい始めてしまう。 「ごめん福田くん、じゃあ」 このチャンスを逃すまいと奈央も慌てて未里にそうとだけ言い残して、聖と爽の後を追った。 だが、未里はどうにも諦めが悪い。せっかく会えた奈央を少しでも視界に収めていたいのか、わざわざ食堂内に戻って奈央から少し離れた席に腰を下ろしてしまった。 「あれ、先輩のファン?なんかしつこそうですね」 「聖、声落とせよ。聞こえるって」 「でもああいうのって迷惑だって分からせたほうがいいんじゃないの?」 双子も未里の存在に気が付いたらしい。注文した料理に手をつけ始めながら、聖のほうが奈央に提言してきた。爽はそれを見て少し焦ったように未里の反応を気にし始めた。 でも未里のほうには幸い声は届かなかったのか、表情を変えずにただジッと奈央を見つめてくるだけに留まっている。

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