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act.4哀婉ドール<93>
「あの子は前からそうだから。もう慣れちゃったかな」
「ふーん。生徒会って大変っすね」
未里は生徒会に入る前からああなのだが、わざわざそれを双子に説明をしなくても構わない。奈央はうんざりした顔の爽に苦笑いを返した。
「生徒会ってああいうファンばっか付いてるんですか?」
「どうだろう?忍と櫻にはファンっていうより、崇拝者みたいなタイプの子が多い気がする。直接話しかけるのも恐れ多いって感じかな」
「「あぁ、分かる気がする」」
なぜ双子が生徒会の周囲が気になりだしたのかは分からないが、奈央は彼等の疑問にはきちんと答えてやる。変な距離を置かずに接してくる彼等のことを、奈央は気に入り始めていたのだ。
「じゃああの金髪でデカイ人は?俺ら全然会ったことないけど」
「幸ちゃん?」
確かにあまり表に出てこない幸樹が双子と接する機会はなかっただろう。でもそれは友人である奈央も同じくだ。幸樹がどういった生徒から好意を寄せられがちなのか、あまり把握はしていなかった。
「熱狂的な子たちはいるみたいだけど、幸ちゃん自体がほとんど登校していないから目立たないんじゃないかな」
唯一分かる情報を提供してやれば、双子は食事を続けながら納得したような表情をみせた。
「「じゃあ葵先輩は?」」
わざわざ顔を合わせなくても声が揃う二人には驚かされたが、素直に葵への好意を表す所が幼く見えて思わず笑ってしまいたくなる。
「葵くんは……ちょっと危ないかな」
「危ないって?ヤバいファンが多いってこと?」
「それもそうだし、葵くん自身に自覚がないから危険っていうか」
葵を可愛いと言う生徒は多いが、その中でも危険な視線を送る連中にはいくつか心当たりがあった。冬耶と遥がしっかりと釘を刺して卒業したおかげで今のところ表立って動きはないが、生徒会が前年度に引き続き葵を過保護に守っているのはこうした背景がある。
奈央の言葉で双子は一度顔を見合わせると、今までとは違い、少し真剣な面持ちになった。
「今日、葵先輩、襲われてました。多分、同級生に」
「え?襲われてたって?どういうこと?」
恐らく彼等の本題はこれだったのだろう。周囲を気にするように聖から持ち掛けられたのは思いもよらないことだった。
それから双子は交互に今日あった出来事を奈央に打ち明けてくれた。
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