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act.4哀婉ドール<94>
葵が同級生数人に連れて行かれそうになっていて、遭遇した双子が助けてやったこと。それだけではなく、どうやらその前に教師に脱がされかけたと葵が怯えていたこと。そして最後におまけのように、葵を襲った同級生が都古にも絡んでいたのを見たとも告げられた。
葵に手を出そうとした二年生の特徴を聞けば、あまり素行が良くないとマークしていた生徒の顔が浮かんだ。
教師のほうにも心当たりがないわけではない。歓迎会の時にずぶ濡れになった葵の服に喜々として手を掛けていた一ノ瀬の可能性が高い。冬耶が一ノ瀬を危険視していたから、奈央も警戒すべき存在だとは認識していた。
「さっき葵先輩とデートしたいって冬耶さんに電話で申し込んだ時に、一応このことも報告したんです」
「そしたら”なっちに言っとけ”って言われて」
彼等は奈央に相談した経緯も教えてくれた。”デート”の申し込みも気になるが、何より冬耶の反応が気がかりだ。
直接的に圧力を掛けられるのも恐ろしいが、こうして人伝だと一層彼の怒りを感じられる。
葵を彼が抱える闇から救ってやりたい。そう願う前に、まずはこの学園を葵にとって安全な場所にしてやらねばならない。冬耶から卒業時に引き継がれた課題をクリア出来ていないままの奈央では、葵を救うなどまだ早いことは明らかだった。
「言ってくれれば俺らも動きますよ」
「顔に怪我するのはまずいっすけど、それ以外なら別に平気だし」
冬耶に改善出来たと報告しなければならない。それにはまずどうするべきか。頭を抱え始めた奈央を見て、双子は援助を名乗り出てくれた。やはり彼等は少々分かりにくく言葉の選択も時折下手だと感じるが、それでも優しい性質を持っているのは間違いない。
「ありがとう、何かあったらお願いするよ」
本来ならば生徒会の中で解決しなければならないこと。目立つとはいえ、一年の一般生徒である双子の力を借りることはない。だが、せっかくの申し出を無下に断るのは失礼な気がして、奈央は素直に礼を述べた。双子はそれに対して満足げな笑顔を浮かべたから、これで良かったのだと思える。
「ねぇ高山先輩。生徒会入るのって、難しいですか?」
「生徒会?入りたいの?」
聖からの唐突な問いに奈央が思わず質問を返してしまえば、聖は大きく頷いてみせた。
「現役役員からの推薦さえ貰えればなれるんですよね?」
「実質そうだけど、選挙に出てあまりにも全校生徒からの支持が少なければ落ちる可能性もあるよ」
「あーそれはまずいな。好かれてはなさそうだもん」
奈央が聖の認識を正してやれば、聖は残念そうに眉をひそめた。
彼の自己評価の通り、双子はその容姿を好む生徒は居るものの、いきなり高等部から編入してきて、あっという間に葵と親しくなったことを生意気だと妬まれている。
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