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act.4哀婉ドール<96>

* * * * * * 「ムカつく、ムカつく、ムカつく」 「落ち着けって、未里」 食堂を出た未里は、傍に控えていた自分の取り巻きがなだめるのも聞かず、不機嫌を露わにして廊下を進み始めた。 自分がどれほど奈央に歩み寄ってもかわされるというのに、どうして急に現れた一年生にまで先を越されてしまうのか。腹が立って仕方がなかった。 こういう時の発散方法は一つしか知らない。 未里は取り巻きを振り払うと、携帯であるアドレスを呼び出し、そして今から会えないかとメールを送信した。するとすぐに寮の一室を示す部屋番号だけが返信されてくる。 時間が書かれていない、ということはすぐにでも向かっていいという証。 未里は一旦自室に戻ると手早くシャワーだけを浴び、目的の部屋へと向かった。待たせれば怒られることは分かっているが、会ってしまえば相手が体を清める時間すら与えてくれないのはもう数度の経験で把握していたからだ。 指定されたのは三年のフロア最奥のスペース。前年度会長の冬耶の手によって、隔離されたように改築された場所は、他の者を寄せ付けない、禍々しい雰囲気さえ漂っている。 ノックをしても返事はない。試しにノブをひねってみれば施錠されてはおらず、簡単に扉は開いてくれた。 月明かりだけが差し込むワンルームの室内にはベッドぐらいしか置かれていない。そこに求めていた人物が腰掛けていた。 「若葉、いつから戻ってきてたの?」 「……自分から誘ったくせに何分待たせるの、未里チャン?」 未里の問いかけには答えず、赤髪の男、若葉は気だるげに首を傾げ、そして手にしていた煙草を投げつけてきた。火の付いたままのそれは床に落ち、じりじりとフローリングを焦がしていく。 さすがに未里も慌てて身を屈めて火種を消したが、立ち上がろうとするなり近付いてきた彼に首根っこを掴まれ乱暴にベッドへと投げ飛ばされた。 「先に頂戴?」 痛みに顔を歪ませる未里を気にすることなく、自分もマットレスへと乗ってきた若葉は大きな手を差し出してきた。 何を求められているかは分かっている。未里は自身のポケットに突っ込んだ金をその手に乗せてやった。 彼、若葉にはこうして金を渡して抱いてもらっている。気ままな彼には相手にされないことも多いが、こうして気まぐれに時間を作ってくれることがあるのだ。 奈央で満たされない気持ちをセックスで解消するだけならば、いくらでも学園内で相手を見つけることは出来る。実際にそうして楽しんでもいたが、わざわざこの暴君のような男に金を渡してまで関係を続けるのには訳があった。 引きちぎるように服を脱がされながら、未里は彼の気を引く言葉を告げた。

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