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act.4哀婉ドール<97>
「今の何倍でも出すから、奈央さまに近づく人間、全員消して」
「それ、俺に何のメリットがあんの?」
金だけでは動かない。そう若葉に返された。
確かに若葉自身、金に困っているわけではない。ただセックスに金が付いてくるなら損はない、そう考えて気が向けば未里の相手をしてくれる。その程度だ。190を越す長身に獅子のような鋼鉄の体を持つ男は、中身も気ままな野生の獣のよう。誰の思い通りにもならない。
「一番ムカつくのは藤沢葵。知っているでしょ、若葉も」
若葉が単純に未里の要求を飲んでくれないことは予測していた。だから未里は更に餌を与える。
「フジサワ?誰?」
「西名冬耶が可愛がってた子。前教えたじゃん」
「……あぁ」
在学中ずっと張り合っていた冬耶の名前を出せば、若葉の瞳に獰猛さが増した。
「色んな男に手出してるくせに、未里の奈央さままで取るの。ムカつくから、消してよ」
「へぇ、じゃあビッチ同士、仲良くしろよ」
にやりと笑う若葉はまともに未里の話を聞く気がないらしい。冬耶が宝物のように大事にしている存在と伝えれば、それを潰したくなると思ったのだが、やはりそう上手くは行かないらしい。以前も葵のことを伝えたのだが、彼はちっとも興味を示さなかった。
「西名が抱いているビッチに何の価値があんの」
「違う、藤沢は特別。ただの後輩じゃない。藤沢を取ったら、若葉の望むように西名冬耶は降参すると思うよ」
「ふうん」
必死に訴えかけるが、やはり若葉はそれほど関心が持てないらしい。
未里の体をうつ伏せにしてシーツに押し付けると、話の途中だというのに、前戯もせず、熱い楔を打ち付けてきた。
「……ッ」
慣れているとはいえ、慣らしもしてくれない行為はさすがに苦しい。事前に自分で解して来なければ、きっと裂けていたに違いない。
「わか、ば…まだ、待って」
「顔見せんな、萎える」
獣のようにのしかかってくる男を一旦止めようと振り返ったが、それは上から押さえつけられてしまう。酷い扱いだ。でもそれを分かっていて彼に頼るのは未里自身の意思。
そこに微塵の愛情も無い、乱暴な行為とはいえ、押し入ってきた若葉は的確に未里の弱いところを突き上げてくる。痛みよりも快感が増して来るのにはそう時間は掛からなかった。
それでもどこか冷静な頭でこれからの作戦を練り直す。若葉に頼れないのなら、誰の手を借りようか。
葵を抱きたいという人間なら学園内にいくらでも居るが、葵にきちんとダメージを与えられて未里にリスクのない手法を取らなければならない。
まずは候補として思い浮かぶ人物たちをけしかけてみよう。
一度目の熱を放出しながら、未里は口元をにやりと歪ませ、そして”もう一度”と獅子に体を差し出した。
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