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act.4哀婉ドール<110>*

「んんッ……あ……ん」 まるで口淫を施すかのように指の中でも一番小さな小指を口に含んで吸い上げれば、葵がイヤイヤと首を振るのが視界に映る。溢れ出る声を我慢しようとしているのだろうが、忍の耳にはきちんと愛らしい鳴き声が届いていた。 小指から順に大きな指へと、一つずつ丁寧にしゃぶり上げれば、もうそれだけで葵からはくったりと力が抜けてしまった。 「たったこれだけで」 最後の仕上げとして足裏にスッと舌を這わせ顔を上げれば、葵が真っ赤な顔をしてひくひくと肩を震わせていた。そしてパジャマの裾部分が少しだけ押し上げられているのも見える。 「葵、右だけじゃ寂しいだろう?」 本質的には自分も櫻とそう変わらないことは忍も自覚していた。だから葵を慰めるのではなく、まだ手付かずの左脚に手を伸ばす。 同時に濡れた右脚を下ろしてやれば、敏感になった肌にはシーツの感触ですら刺激になるのだろう。一度はついた脚が逃げるように宙に舞った。 ふらふらと行き場を失くした脚を忍自身の腿に置いてやり、忍は今度こそしっかりともう一つの脚を掬い上げた。 先程と同じように、いや、それ以上に念入りに肌を啄めば、もう葵からは必死に噛み殺した嬌声しか上がらなくなってしまった。 「やはり履いたほうがいいか?」 ひとしきり味わい満足した忍は、床に落ちたままの寝間着の片割れを指して尋ねる。だが、シーツですら苦しい刺激になるほど感度を上げられた今の葵が、シルクの感触に耐えうるわけがない。案の定、葵からは力なく拒絶が返ってきた。 「少し苛めすぎたが、ここまで敏感なお前も悪い。何でもない戯れだろう?」 くんと鼻を鳴らして涙を零す葵の手からようやく自身の眼鏡を取り上げ、サイドテーブルへと置いた忍は葵にも悪い部分があるのだと指摘してみせた。 葵がただくすぐったいと言って笑うのならそれで終わっていたのだ。でも誰かがその感覚と快楽を結びつけて葵に仕込んだようだ。内面とは裏腹にすっかり淫らな色に染まる身体を見せつけられれば、止めろというほうが無茶な望みだ。 羽織っていたガウンを脱ぎ捨て、もう一度ベッドに上がれば、葵は身を隠すようにぎゅっと身体を丸めてしまっていた。けれど、顔は背けずに目元を紅くしたままむくれて忍を見つめてくる。

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