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act.4哀婉ドール<118>*
* * * * * *
窓の外は少しだけ明るくなっていたが、それでもまだ目覚めるには早い時間。だが葵は体をまさぐられるくすぐったさに耐えられなくて瞼を開いてしまった。
腰から臀部に掛けて悪戯に擦ってくる犯人など一人しか居ない。目の前の人物を探るようにそっと見上げれば、葵の予想に反して忍はしっかりと瞼を閉じ、静かに寝息を立てていた。
「……ん」
けれど、間違いなく忍の手はシルクの生地越しに葵の肌を突いてくる。眠りながらこんな悪戯を仕掛けてくることなんて有り得るのだろうか。
「会長、さん?」
疑うように声を掛けてみるが、忍の瞼はぴくりともしない。普段は眼鏡で隠されている瞳は長い睫毛に縁取られていることが分かる。
そうしてジッと見つめているうちにも忍の手は布越しにきゅっと柔い肌を揉んでくる。強い力ではない。だからこそ、むず痒くて落ち着かない。
眠る前に必死で堪えたはずの熱がうずうずと湧き上がってきそうなのだ。
だから抵抗するようにそっと忍の胸元を押し返してみるが、余計に離すまいと強く腰を抱き寄せられてしまう。
つるつるとしたシルクの生地は何とか葵の双丘を隠してはくれるが、忍の手はそこへ侵入しようとしてきた。大きいけれど、決して骨骨しくはないあの手が自分の体を弄る。直接見えるわけではないのに、その光景が目に浮かんで、それだけで体が熱くなる。
このままではいけない予感がして葵は本格的に忍の手から逃れようと試みた。
だが、やはり離れようとすればするほど、忍は葵を強く抱いてくる。葵を抱き枕かなにかと勘違いしているのだろうか。そう思えば納得が行くが、それでもただ抱き締めるだけで済まないのだから葵を困らせる。
「……う、ん」
今までは忍の腕を枕にして向き合うように眠っていたのだが、忍が仰向けに寝返りを打ったのと同時に葵の体も忍の上に抱き上げられてしまう。
より密着させられる体勢は、熱を持ち始めた場所を必然的に忍に擦り付けることになる。
「あの、会長さん、ちょっと離して……」
忍の胸に手を置き、体を起こそうとするが、やはり忍の手は葵の腰を掴んで離さない。
内腿を揉むほぐすように食い込む指と、裾から侵入してくるもう一つの指先。
「んッ…だ、め」
布越しではなく直接臀部の肌を這い回る指。逃げようと腰を揺らせばじんわりと芯を持ち始めた箇所を忍の腹に押し付けてしまう。互いに身に付けた寝間着のボタンがツンと先端を掠め、それだけで泣きたくなるほどの熱がじんわりと溢れてくる。
忍はただ眠っているだけ。葵一人が体を火照らせている。その対比がより葵の羞恥を煽る。
熱を鎮めなくては。そう思っても、忍の手が柔らかな肌を揉みながら段々と狭間に滑り落ちてくるのだから堪らない。
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