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act.4哀婉ドール<119>*
“葵ちゃんが気持ち良いって感じたら、ココが反応するの”
櫻に教えられたことを思い出す。どうしてあんな場所を触れられて気持ち良いのか。ちっとも分からないけれど、それでもこれがイケない感情な気がして目頭が熱くなる。
それでもすりすりとシルクに先端を擦られ、陰部をくすぐる指先に翻弄されると、じわじわと生地に染みが広がる感触に襲われる。
「……あおい?」
啜り泣きの声が聞こえたのだろう。ようやく忍が身じろぎをし、瞼を開いた。でも葵にとっては最悪のタイミングだ。掠れた声に呼ばれても、迂闊に顔を上げることが出来ない。
「真っ赤な顔して、何してる?」
「何でも、ない……です」
顎を掬われまじまじと観察されるのを逃れるように顔を背けるが、忍はすっかりお見通しの顔をしている。
「人の腹を使って自慰とは随分いやらしいな」
「あっ……これ、は」
「こら、離れるな」
“自慰”が何を示しているのかピンと来ないが、忍に擦り付けている行為を示されているのは分かる。恥ずかしくてすぐに体を逃がそうとするが、やはり起きていても許してはもらえない。
「会長さんが……触る、から」
「ん?俺が?」
忍は全く心当たりがないと言わんばかりに葵を見下ろすが、何かを思い出したようにフッと口元を緩めた。
「あぁだからか。いい夢を見ていたんだ。お前を抱いている夢」
汗ばむ額に張り付く葵の前髪を払いながら、忍はまるで秘密を打ち明けるように囁いてくる。
「で、触られてどうなった?」
「ぁ…んッ……も、触らないでください」
またするりと裾から滑り込んできた指に肌をくすぐられて、葵は今度こそきちんと忍に苦情を申し立てた。
「だから治めてから寝かせてやると言ったのに」
忍は葵の視線を気にも留めず、昨夜葵が拒んだことを詰ってきた。そうは言われても忍がこうして触れてこなければ、体は熱くならずに済んだのだ。果たして葵が責められるべきことなのだろうか。
「どうする?可愛がってやろうか?」
「……もう少し、寝ます」
誘いを断り、腕から抜け出て背を向ければ、忍からはくすくすと笑う声が聞こえる。
忍は優しい。それは知っているけれど、こうして悪戯に肌に触れてくる所と意地悪をしてくる所は少しだけ、直してほしいと思う。
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