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act.4哀婉ドール<120>*
「好きだから触れたい。自然な感情だろう?」
背中からまた抱き締めてきた忍は、葵の首筋に唇を落としながらそんなことを問いかけてくる。
キスもハグも、好きな人とする行為だということは教えてもらってきた。だから嫌なわけではない。でも自分ですらまともに触れたことのない場所を弄られて湧き上がる熱をどうやり過ごしたいいのか分からなくて怖いのだ。
「……櫻先輩とも、お泊りの時はするんですか?」
皆が当たり前のようにする行為なのなら、こうして逃げたがるのはおかしいのかもしれない。そう思って尋ねた質問はまた忍を笑わせることになった。
「櫻と?こうして抱き合うかって?」
「はい。だって仲良し、だから」
「櫻はゲストルームに泊まる。共にベッドに入ったことはない」
笑いを噛み殺した様子の忍から返ってきたのは思わぬ真実だった。
「え?じゃあ奈央さんとは?」
首だけを捻って忍を振り返って、もう一人、忍と親しいはずの人物の名を口にしてみた。奈央とも長い付き合いだと聞いたことがある。潔癖症な櫻と共に寝ることはなくても、穏やかな奈央とならあるだろう。
けれど、忍は口元に笑みを携えたまま、首を横に振った。
「こうして共に眠りたいのも、肌に触れたいのもお前だけだ。それも分からないのか?最大限伝えているはずなのに」
ちゅっと頬にキスを落とされて告げられた言葉は、じんわりと胸に火を灯してくる。
「だから、触っていいよな?」
またツッと腿を指先が上りながら、囁かれる声は背筋が震えるほど色っぽい。”だめ”、そう口にしたつもりだけれど、上手く声にならずに消えた。
それを了承と捉えたのか、忍が熱を持つ場所まで上り詰め、そっと触れられる。
「んッ……そこ」
「やっと触れた。随分可愛らしいな」
「……ぁ、ん」
いきなり扱きはせず、そっと会陰の膨らみから陰嚢、そして根元から先端へと僅かに触れる程度でゆるゆるとなぞってくる。それだけで背中が反りすっかり熱が確かなものになる感覚がした。
忍の手を剥がすように自分の手を重ね、体を丸めてみるが、それは後ろからすっぽりと抱き締めてくる忍の腕をより強く引き寄せてしまうことになる。
「刺激に弱いのは魅力的だが、ロクに抵抗が出来なくなるのは心配だな」
「…あッ…ん、ん」
ツンと突かれるだけでとろりと溢れてくる蜜は器用な指先に掬われ、そして塗り伸ばすようにまた先端から会陰のラインを辿られる。
「他の誰にも触れさせたくない。叶うなら毎晩こうして共に眠りたいぐらいだ」
「………ッ」
想いを強調するように、忍は張り詰める葵を初めてきゅっと握り込んだ。突然の直接的な刺激は声すらも上げられないほど強かった。桃色の唇がぱくぱくとわななく。
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