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act.4哀婉ドール<121>*

「ここも、すぐに触りたくなる」 「………ぁ、ん」 葵が落ち着くのを待ってはくれず、忍はもう片方の手を更に上に滑らせ、寝間着の上からそっと胸元をまさぐってくる。そして目的のものを見つけると、そこを指の腹で撫でてきた。 腰を揺らせば咎めるように胸を摘まれ、身を捩ればぐちゅりと音が鳴るほど扱かれる。逃げ場のない快感は葵の体をぐずぐずと溶かし始めていた。 「本当はここまで手を出すつもりはなかったのに。擦り付けてくるのが悪い」 「だ、から……それ、んんぅッ」 誤解だ。そう言いたいのに、合わせ目から滑り込んだ指に直に胸の尖りを揉み込まれ、止めどなく蜜を零す鈴口に爪を立てられれば、もう何も言えない。 堪えるように爪先でシーツを掻き、口元を手で覆うけれど、忍から与えられる刺激は激しさを増すばかり。視界がチカチカと白み、さざ波のように快感が身体中をめぐる。 「……あ、ッ……あ」 「愛してるよ、葵」 甘い言葉と共にダメ押し、とばかりに耳たぶを食まれる。瞬間、先端を嬲られ、とうとう耐えきれずに忍の手の平に迸りを放ってしまった。 「起きるにはまだ早い。もう少し寝ていろ」 絶頂の余韻に浸って荒い呼吸を整える葵とは違い、忍はいつも通りのクールな声音。葵の顔を覗き込んで一度唇を奪うと、彼はベッドから降りていった。 楽になれるはずなのにまだ体には発散しきれない熱が溜まっているような感覚がする。葵は自分の体を抱き締めるようにしてもう一度布団の中で丸くなった。 早く治まって欲しい。そのためには早く眠らなくては。そう思うのに、気ばかりが焦って逆に目が冴えてしまう。 「なんだ、まだ寝ていないのか」 戻ってきた忍はベッドに入らず、葵側のベッドサイドに立って呆れたように見下ろしてくる。その手には白いタオルが握られていた。 「あれだけ濡れてたんだ。気持ち悪いだろう」 「あ、いや、大丈夫です」 忍がそのタオルで何をしようというのか。分かってしまって葵は慌てて首を横に振るが、面倒を見たがる忍はちっとも引く気配をみせない。逃げようとしても、身を隠していた布団を捲られ、足首をしっかりと掴まれてしまう。 結局温かな蒸しタオルで濡れそぼった性器だけでなく、”ここまで垂れている”なんて羞恥を煽りながら双丘の狭間までくまなく拭われてしまった。とてつもない辱めである。 「も……やだぁ」 「可愛い声を出しても無駄だ」 忍の指や、シルクの生地とは違う。ざらりとしたタオル地はまた違った刺激を生んで葵の体を蝕む。 「だから寝ていろと言ったんだ」 葵が真っ赤になって悶える姿を見ながら、忍はそう言って笑う。その笑顔の奥にまだ妖しい色が滲んでいて、葵はくらりと目眩を起こす。 「もう少し、綺麗にしようか」 ほらやっぱり。予感は当たった。いやいやと首を振っても忍は満足しないらしい。タオルを畳み直し、新たな面を見せながら忍はまたそれを葵の脚へと滑らせてきた。 ただ拭われているだけにしては、随分と執拗だ。でも拒めない。こうなっては早くこの時間が終わるよう、葵はただ抱き寄せた枕に顔を埋めて涙を零すことしか出来なかった。

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