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act.4哀婉ドール<123>

出てきた時と変わらず、葵は落ち着いた濃いブラウンのカバーで覆われた布団の中で大人しく丸まっている。あどけない顔をしているのは知っていたが、眠っているとその無垢さが増すのが分かる。 こんな子供に手を出した、その罪悪感でちくりと胸が痛むが、快楽に身を任せ始めると途端に淫らに化けるのだから忍だけのせいではないはずだ。むしろ、清いままで帰してやるのだから感謝してほしいぐらいだ。 「葵、そろそろ起きようか」 ベッドに腰掛け、淡い金色の髪を撫でてやると、小さく吐息を零して葵が身動ぎをする。でもまだ瞼は重たそうだ。 「起きないと今度は全身、苛めるぞ」 明け方葵を苛め抜いた行為を囁やけば、ようやく葵の肩がぴくんと跳ねる。あまりにも可愛く悶える姿につい我慢が出来ず、下半身を嬲り倒してしまった記憶は葵にもきちんと刻まれているようだ。 「……ん、やだ」 「ならまた次、共に眠る時まで取っておこう」 目を擦りながら起き上がってきた葵に手を貸してやりながら、忍はさらりとリクエストをしてみる。 「つぎ?」 「あぁ、今度はもっと深い所まで仲良くしよう」 まだ覚醒しきっていない葵は忍の誘いに訳も分からぬままこくりと頷いてきた。”仲良くする”、性的な悪戯をそう表現しただけなのだが、葵は言葉通り純粋な意味に捉えたのかもしれない。 「あの……」 「バスルームで着替えて来い」 忍から服を受け取ってももじもじと固まる葵が何に困っているかは分かる。だからそう助け舟を出せば、葵は素直に受け入れて小走りで隣室へと向かった。 あれだけいやらしいことをしたというのに、やはり忍の前で上半身を露わには出来ないようだ。ただ恥ずかしいというだけでなく、ぶかぶかの袖口から時折覗く包帯のせいだと言う事も櫻から聞いて知っていた。 待っていると、葵がきちんと上下、元の服を身に着けて忍の元まで帰ってきた。 「洗濯して頂いて、ありがとうございました」 やはり葵は胸元の部分を示しながら、にこりと微笑んでくる。気になっていた染みが綺麗さっぱり消えていた。そんな小さな事に嬉しさを隠しもせずに笑うところが堪らない。 「本当に幸せだ。葵、寮に戻ってもまたこうして俺の部屋に泊まりに来てくれないか?」 朝から可愛い想い人を堪能出来る。その幸福を覚えてしまえば、どうしても離し難い。腰を抱いてキスを落としながらストレートに誘い込めば、葵はジッと忍を見上げ、そして頷いてくれる。 「ご迷惑で、なければ……」 「迷惑なわけはないだろう。もっと親しくなりたいんだ」 「んッ……でも触るのは、ナシ、です」 また思わずデニム越しに腰からなだらかな尻のラインを擦ってやれば、きゅっと眉をひそめた葵に叱られてしまった。 「深い所まで、と言っただろう?たっぷり愛してやるからな」 そうしてもう一度キスを交わせば葵は少しだけ後悔したようにうなだれてしまった。

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