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act.4哀婉ドール<137>

「俺が、小さくなる」 「いや、それも無理だろ」 「うるさい、邪魔、すんな」 せっかくの葵との会話に入ってきた京介を睨みつければ、彼は苦笑いのまま目を逸してくる。都古が葵の膝を占領していたことを彼が面白く思っていないことは感じていた。誰も見ていない所では、京介も葵の膝を借りて寝ることがあるのを知っている。だからこうして突っかかってくるのだろう。 でもそれが都古の至福の時を邪魔していい理由にはならない。こうなったら葵の甘い誘いに乗って、我慢せずに二人きりになってしまおう。 そう思い立って葵を今度こそしっかりと抱き上げてリビングを出ようとすれば、何故か京介もその後をついてくる。 「なんで、来んの」 「お前が暴走しないように見張ってんの」 随分と余計なお節介である。でも生憎腕の中の葵は久しぶりに三人で眠れることを喜ぶ素振りを見せているから、拒絶することは出来なかった。 学園の寮では葵の部屋で三人並んで眠ることが定番になっていた。だがここ数日は連休のせいで三人での時間は取れていない。都古も、そしておそらく京介も三人での団欒はちっとも必要としていないのだが、葵が二人の腕に収まることを求めているから致し方ない。 「京ちゃんは?寝ないの?」 「お前のベッドじゃ無理だろ。ここ、居るから」 京介の言う通り、葵のベッドではせいぜい二人が限界だ。都古が葵を抱いたままベッドに上がれば、京介はその後には続かず一人ベッドサイドに腰を下ろしてみせた。 「じゃあ手、繋ご」 「……ガキ」 言葉ではあしらうくせに、結局京介は葵が伸ばした手を優しく握り返している。本当に素直じゃない奴だと、都古はそんな甘ったるい光景を見ながら文句の一つでも言いたくなる。 「アオ、俺は?」 「みゃーちゃんはぎゅってしよ」 京介に負けじと自分のポジションを問えば、葵からも都古に体を寄せてくれた。温かくて華奢で、それでいて不思議と柔らかい肌はその感触を味わうだけで優しい眠りに誘われる。 本当は櫻と何があったのか。藤沢家の人間にどんなことを言われ、どんな不安を感じたのか。どうして都古の元ではなく、忍の家に逃げ込んだのか。聞きたいことは沢山あった。 けれど、京介の居る場では葵も答え辛いだろう。それに葵をようやく抱き締められた。その幸せをまずは噛み締めたい。 「おやすみ、みゃーちゃん」 だから都古は葵が髪を撫でながら囁いてくれる言葉に身を任せ、ゆっくりと瞼を伏せた。

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