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act.4哀婉ドール<147>

* * * * * * 昼間眠った時のように、ベッドの上には都古が、そして床には布団を持ち込んだ京介が寝転がっている。三人で眠りたいと願ったのだけれど、寮とは違い普通のシングルベッドではそれが叶わなかった。 壁側にいる都古からは背中から抱き締められ、ベッド下にいる京介とは不自然な体勢ながら手を繋ぐ。二人の体温をきちんと感じているだけで、どうしてこんなにも安心出来るのか分からない。 灯りはベッドサイドのほのかなランプだけ。柔らかな光に照らされた京介が”おやすみ”と声を掛けてくれるから、葵もゆっくりと瞼を閉じる。 けれど、風呂上がりに冬耶に髪を乾かしてもらっている時までは確かに感じていたはずの眠気はどこかへ行ってしまっている。考えなければいけないことが多すぎるのかもしれない。 ”何もしなかったのが問題” カフェの化粧室であの男から言われた言葉を思い返す。随所に葵を昔から知っているようなことを彼は言うが、葵に覚えはない。サングラスが目元を隠しているから名前どころか顔すらまともに分からない状態で思い出せというほうが難しい。 でも葵自身、大切なはずの記憶を頑なに仕舞い込む傾向がある。それを思い出す手助けをしてくれる人がいると言って京介に紹介されたのが、医師の宮岡だ。彼の力を借りれば、あの男の正体も分かるのだろうか。 「……京ちゃん、起きてる?」 繋いだ手を軽く揺さぶり、小さく声を掛けてみる。案の定まだ眠りについていなかった京介はすぐに瞼を開いてこちらを見つめてきた。 「どうした?寝れない?」 葵が起きていたことに驚きながらも、京介は優しく尋ね返してきた。都古が居るとは言え彼はとっくに眠りについている。こうして二人きりの時は口調のきつさが和らぐのだ。 「あのね、次、宮岡先生にいつ会えるかな」 「宮岡?会いたいのか?」 「……うん」 葵が彼の名を出せば京介の表情にわずかに険しさが宿ったように見えた。 病院はどうしても苦手だったけれど、宮岡の部屋は院内とは思えないほど温かな空間だった。彼自身の笑顔も信頼できる。 「宮岡先生と、お喋り、したい」 診察ではなく、楽しくお喋りをしようと誘ってくれたのも葵の心を溶かした。彼なら助けてくれるかもしれない。

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