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act.5三日月サプリ<3>

「どうする、爽」 「どうって……撒く、とか?」 爽も戸惑っている様子だ。初めて邪魔無しで葵と過ごせると思ったのに、監視付きではちっとも楽しめない。 でも聖が離れた場所でこちらを見ている兄弟にもう一度視線を投げれば、冬耶からは手招きをされた。無視するわけにもいかない。聖は爽に葵を任せて一人、彼等の元に近づいていく。 「今日はあーちゃんのことよろしくな。あーちゃんもすっごく楽しみにしてたから」 朗らかに笑ってくる冬耶からは双子に対しての敵意は感じられない。険しい顔をし続けたままの京介とは違う。 「でも冬耶さん達もここで遊ぶんですよね?もしかして着いてくる気ですか?」 「あぁ、俺達のことは気にしないでいいよ。たまたま行き先が被るかもしれないけど、合流するつもりはないから」 あくまでにこにことしているが、発言の内容は聖を安堵させるどころか不安にしかさせない。はっきりと言わないが見守ってくるつもりなのだろう。とんだ誤算だ。 「俺達、ただ普通に出掛けるだけですけど。ちょっと過保護過ぎません?」 「嫌だったらこのまま混ざってもいいんだよ?あーちゃんはきっと喜ぶし」 今までただ優しいお兄さんだと思っていたが、ここでようやく歓迎会で奈央から注意されたことを思い出す。 “かなり変わってる方だから、気をつけてね” 確かに身なりも変わっているし、歴代生徒会長の中でもとびきり異色の存在だという噂も聞いていた。でも彼の根本はきっとこの度を越したブラコンによるものだろう。 穏やかな口調なのに有無を言わさぬ圧力がある。きっとここで拒んだら本当にデートに乱入してくるつもりだ。そして葵もそれを受け入れてしまいそうな気がする。結局のところ、葵は聖と爽の思いを理解してくれてはいないし、皆で賑やかに過ごすことが好きなのだ。 「……じゃ、気にしないことにします」 「うん、楽しんでな」 折れるのは悔しいが、葵とのデートのほうが重要だ。聖は心配そうにこちらを見てくる弟と目を合わせ軽く首を横に振る。途端に絶望したように彼の表情が陰った。無理もない。保護者の監視つきでのデートなんて全く嬉しくない。 けれど、こうなってしまっては割り切る他ない。聖は葵のもとに駆け戻ると、早速とばかりに一回り以上小さな手を握り締めた。 「葵先輩、今日はいっぱい楽しみましょうね」 そうやって顔を覗き込めばとびきりの笑顔と頷きが返ってきた。楽しみにしてくれていたという冬耶の言葉は嘘ではないらしい。それならばもう外野など気にせずにいたほうがよっぽど賢い。

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