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act.5三日月サプリ<13>

* * * * * * 橙色の光が無数に降り注いでいるというのに、どこか仄暗い店内。その中で今、聖と爽の二人はケースに詰まったヴィンテージビーズを無心になって眺めている。およそ八十年前のものだというビーズは多少の傷は付いているもの、独特の渋みがあって美しい。 そのビーズを使ったストラップを彼等は選んでいるようだった。従兄だという有澄に買ってもらうらしい。だから葵は邪魔にならないよう、そっと店内の散策を再開し始めた。 店内にはあらゆる品物があって目移りしてしまうが、葵が一番に目を惹かれたのはカウンター脇にあるアクセサリーの棚。男性ものらしいシルバーやレザーを使ったデザインのピアスやネックレス、ブレスレットの並ぶ列を眺めて思い浮かぶのは幼馴染の存在。 京介の誕生日は来月だ。毎年何をあげていいか悩んで、結局無難なものになってしまう。京介に欲しいものを聞いてもロクに答えてくれないし、今から考えておいたほうがいい、そう思った。 ここには葵よりもずっとセンスが良くてファッションに詳しい聖と爽が一緒にいる。アドバイスを貰うのもいいかもしれない。 「藤沢ちゃん、それ気になる?ちょっとサイズ大きいかもよ」 葵がジッとガラスの向こうを見つめていると、背後から有澄が声を掛けてきた。わざわざ棚にかかった鍵も外してくれる。そして葵が一番に見つめていたシルバーのバングルを葵の手の上に乗せてくれた。 冷たくて、そしてずしりと重い。けれど、シンプルなデザインはやはり京介に似合いそうだと思った。 「自分用じゃなくて、プレゼントにしたくて」 「あぁ、だったら二つ揃いのほうがいいよね?んー似たようなのあったかな」 有澄に用途を打ち明ければ、なぜか彼は棚の中を漁り始めてしまう。なぜ”もう一つ”必要なのか。 「あの、一つで大丈夫なんですけど」 「……え?なんで?もしかして、どっちかだけにあげるの?そんなことしたら多分泣いちゃうよ。あれで結構泣き虫なんだ」 「えっと何の、話ですか?」 どうやら有澄とはちっとも会話が成り立っていないらしい。どうしても有澄の言いたいことが分からなくて、素直に尋ねてみる。すると有澄も棚から顔を上げ、葵を不思議そうに見下ろしてくる。

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