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act.5三日月サプリ<17>
* * * * * *
葵が双子と入った店から出てくるまでの間、近くの自販機で買ったコーヒーを片手に弟とガードレールに座り込む。
「なんか探偵みたいで楽しいな、京介」
「みたいっつーか、尾行だろ完全に」
冬耶の言葉に、京介はどこか不満げだ。煙草を吸うペースも早い。いくら吸うなと叱っても言うことを聞かないのだから、注意することはとっくに諦めた。
事情を知らない双子と葵をむやみに出掛けさせたくはない。でも双子との約束をこちらの事情で破らせるのも可哀想だ。行き着いた答えはこうして後ろから見守ること。
葵本人は予想通り二人が着いてきていることに全く気が付いていない様子だが、ここに来るまで双子はちらちらと振り返っては少しつまらなそうな視線を向けてきた。保護者に監視されながら、ではデートらしくないのだろう。
嫌がる気持ちはわかるが、もう二度と葵を危険な目に遭わせるわけにもいかなかった。双子を不要なトラブルに巻き込んでしまう可能性も避けたい。
そこまでは京介も同意しているが、目の前で双子が葵にべったりとくっついているのが我慢ならないらしい。時折聞こえる舌打ちが彼の心情を表しているようだ。
しばらくして出てきた三人は、さっきまでよりもぴったりと寄り添っている。全員が楽しそうで、そして晴れやかな顔をしていた。京介には怒られるが、葵を取り巻く温かな環境がこうしてまた一つ増えるのを目の当たりにすると、冬耶は幸福になれる。
「自分が愛されるべき存在だって、あーちゃん分かってくれるかな?」
「さぁな」
冬耶の問いに京介はそっけない返事を返してきた。きっと自分にだけ愛されていればいい。京介はそんなことを考えているはずだ。いつも傍に居る嫉妬深い都古の手前京介は余裕のあるポーズを取り続けているが、長年共にいた兄だからわかる。京介は葵を自分だけの存在にしたいとずっと願っているはずだ。
歩き出した三人の後ろを一定の距離を空けながら進んでいくと、その道すがら彼等は色々な店に立ち寄りながらジュースやサンドイッチ、デザートまでテイクアウトで両手をいっぱいにしていく。
「お?……俺らも何か買ったほうが良いってさ」
冬耶の元に不意に届いたメールの送り主は前を歩く聖。
「双子から?」
「そう、可愛いよな」
どうやらこの先にある広い公園でランチをしようとしているらしい。後を着いてくる兄弟が食事に困らないようわざわざ忠告してくるあたり、突っ張ってはいるけれど根はいい子なのだろう。
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