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act.5三日月サプリ<18>

「まぁ、悪い奴らじゃねぇけど、可愛くはねぇ」 冬耶よりも双子のことをよく知っているはずの京介も冬耶の言葉を真っ向からは否定しない。素直じゃなくて可愛いのは京介も同じだと、きっとそう言ってしまえば彼は本気で怒り出すだろう。 だから冬耶は笑いを堪えて、近くの小洒落たキッチンカーでハンバーガーを買っていくことを提案した。 双子は初めから公園でピクニックをするつもりだったらしい。カバンからレジャーシートを取り出し、葵の衣服を汚さないよう配慮も行き届いている。子供っぽい部分は多々見受けられるが、葵のことを大事にしたい、そんな思いは随所に感じられる。 「あーちゃんとあの双子ちゃんはどういうきっかけで仲良くなったの?」 「入学式の日に懐かれてた」 「へぇ、なんかみや君を思い出すな」 一年前、葵は新しい友達だと言って都古を紹介してきた。綾瀬や七瀬以来の友人の紹介に、冬耶も遥も心から喜んだ。昨日のことのように鮮明に思い出せる。 そして今年は聖と爽と出会った。冬耶が卒業して随分苦しんだようだが、葵なりに前に進もうとしている。その事実だけで涙腺が緩んでしまいそうになる。 「兄貴、都古の家族とは連絡とってねぇの?最近」 躊躇いもなく芝生に直接腰を下ろした京介は、ハンバーガーをかじりながら珍しく都古の話題に乗ってきた。二人が葵を巡って複雑な関係であることは傍から見ていても明白ではあったが、それでも京介は冷たくなりきれないらしい。 「千景さんとはたまに連絡とってるよ。そろそろ半年経つし、せめて千景さんには会わせてあげたいんだけどなぁ」 都古の長兄の名前を出せば、京介は少しだけ眉をひそめた。京介は都古を傷付けた中に千景も居るのではないかと疑っている。でも冬耶はそれをずっと否定し続けてきた。 千景は冬耶が中等部に居た頃の高等部生徒会長だった。どんな人柄かはよく知っているつもりだ。そしてどんなに弟を可愛がっていたかも。口を開けばお互いの弟自慢ばかりを繰り返していたのだから、周りは随分と迷惑をしていたと思う。 「千景さんは関わってないし、ああなるまで気が付かなかったって言ってる。俺はそれを信じてるよ」 「……なら、なんで都古はそいつにも会いたがらねぇんだよ。仲良かったんだろ?」 「まだみや君は気持ちの整理が付けられてないんだ。もう少し時間が必要なんだよ」 千景まで都古を襲っていたとはどうしても思えない。でも京介の言う通り、都古が優しい千景までもここまで完璧に拒絶している理由は気になってはいた。 暗く淀み始める冬耶の心とは裏腹に、遠くで葵達が楽しそうにはしゃいでいるのが見える。互いのサンドイッチを食べ比べて味の感想を言い合っているようだ。

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