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act.5三日月サプリ<30>
「葵先輩、俺も欲しい」
聖といちゃついている葵の気をこちらに向けるように頬にキスを落とせば、少し潤んだ瞳が返ってきた。そして今度は振り返るような姿勢で爽に抱きついてくれる。
「……目、瞑って?爽くん」
「すみません、つい」
自ら近づいてくれる所が嬉しくて凝視してしまえば、葵から苦情が寄せられた。すぐに目を伏せれば、ちゅっと柔らかな感触が唇に触れてくる。たったそれだけなのに胸が高鳴ってしまう。
もっと触れたい。そんな感情に突き動かされて、聖が妬くことも忘れて爽からも葵の唇を奪いに向かった。
「ん……待、って…そ、くん」
「ムリ、さっき不完全燃焼だったもん」
背後にいる爽を見上げるような不自然な体勢では苦しいかもしれない。そんなことを思いながらも自らの手で葵の両頬を包んで深く唇を重ねていく。止めに入るかと思った聖は、爽の予想を裏切り、大人しくそれを見守ってきていた。
数度軽く啄んで自然と開いていく腔内。舌を滑り込ませれば、爽のシャツを掴む葵の手にきゅっと力がこもる。そして爽の舌から逃げるようにイヤイヤと小さく首が振られるが抵抗と呼べるものではない。それを良いことに接合を深めれば、葵の体が大きく跳ねた。
てっきり自分とのキスの刺激に身を捩らせたのかと思えば、どうやらそうではないらしい。違和感に瞼を開くと、葵の纏うカーディガンを捲り上げて悪戯っぽく笑う兄の姿が見えた。
どうやら聖が大人しかったのはキス以上のことを仕掛けるつもりだったから、らしい。それなら思う存分キスを堪能してやろう。そう思ったのだが、聖の尖った声が爽を遮った。
「……キスマーク、薄くなってるけどいっぱい付いてる」
「マジで?」
ほら、と聖が指差す葵の白い胸元にはうっすらとだが確かに点々と鬱血痕が浮かんでいた。葵が慌ててカーディガンごとたくし上げられたカットソーの裾を引っ張ろうとしているが、その手は爽がしっかりと捕らえた。
「葵先輩、これ何?」
「いっつも俺のこと怒るけど、爽も大概だよ」
葵が肌に誰かからの所有の証を刻んでいる。以前見た時そんなものは確かになかったはずだ。いくらキスを与えられた所でちっとも気持ちは収まらない。つい葵を咎めてしまえば、聖は少し呆れた声を出した。
「これは、櫻先輩が……」
「へぇ、連休中に会ったんすか?」
尋ねれば葵はあの日双子と別れて自室に戻った後、訪問してきた櫻と共に出掛けたのだと言う。あの時やはり置いていかなければ良かったと後悔しても遅い。
「「月島先輩と同じことシたい」」
「な、え……なん、で?」
もう一度、誕生日のプレゼントをねだるように囁やけば、今まで以上に顔が真っ赤に染まる。ここまで反応するということはきっとただ肌を吸われて痕を付けられただけでは済まないのだろう。
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