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act.5三日月サプリ<32>*

* * * * * * ────何、してるんだっけ。 ふわふわとのぼせていく頭で葵は必死に今の状況を整理する。 誕生日だという双子にプレゼント代わりにキスをねだられ、櫻が付けた痕を見つかり、何故か他人に触れられていない部分を探すというゲームが始まった。その時点でもう葵には収集が付かない事態だが、問題は先程から二人の唇の位置が全く動かないこと。 聖は左側の胸の突起に執拗に甘噛みを続けてくる。そして見せつけるように時折唇を離し、芯が通って赤く腫れていく様を葵に直視させる。目が合うと元からキツめの目を細めてまた白い歯でそこを苛め始めるのだ。 そうして痛みと紙一重の快感を与えてくる聖とは違い、爽はひたすら舌先でくすぐってきては、ぷくりと存在を主張する尖りを押し潰すように舐めあげる。溶けてしまう、そう不安になるほど丹念に可愛がってくる。 「は……っ、あぁ…ん……う、んッ」 こんな所でも二人の性格の違いを思い知らされるとは思わなかった。左右バラバラに攻められること自体も初めてで、二人の頭を引き剥がそうと躍起になっていたはずの葵の両手は、今では上がる声を抑えるためにただ口元に当てられていた。 聖に噛まれる度に泣き声が上がり、爽に撫でられる度に熱っぽい吐息が零れてしまう。どんなに隠しても二人の耳にはきっと聞こえてしまっているだろう。 「あッ…ん……お、ねが…も……ムリ」 これ以上続いたら本当におかしくなってしまう。懇願するように言葉を紡げばようやく二人が葵を嬲る動きを止めてくれた。けれど葵を見上げる二人の瞳の奥は先程よりも更に妖しく揺らいでいる。 「可愛い、もうとろとろになってる」 「こんなに可愛い顔、皆も見てるのかと思うとますます妬けるね」 二人がそう言って葵の頬を伝う涙を拭い、その指先を口元に運ぶ。直接舐められたわけではないのにその仕草だけで体が震えてしまう。 葵のそんな様子を見て二人は笑ってみせると、聖は胸から下腹部へ、爽は鎖骨から肩口へと口付けを移動させてくる。あくまでゲームを続けるつもりらしい。だから葵は仕方なくこのゲームが無意味であることを口にした。 「無い、から……」 「「無い?どういうこと?」」 「だから、チューされてない、とこ……無い」 どうしてこんなことを宣言しなくてはならないのか。恥ずかしくて今すぐ顔を伏せてしまいたくなる。でも二人はそれを許してくれない。

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