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act.5三日月サプリ<36>*

思い返せば都古もやたらと葵からキスを命令させたがるし、双子だって誕生日プレゼントにキスをねだってきた。京介が”我慢している”と表現したことももしかしたら同じなのかもしれない。 熱の溜まり続ける体では、一度傾いた思考はなかなか元には戻らない。だから葵は双子に”初めて”が欲しいと再びねだられて首を縦に振ってしまった。 椅子に座り続けたままでは難しい、そう言う聖に抱えられ、運ばれた先は部屋の隅に置かれた真っ赤なソファベッド。つるりとした革に落とされれば、自分の体がどれだけ火照っているのか思い知らされる。 「……あの、何、すればいいの?」 恥ずかしいけれど、キスを贈るぐらいならさっきも出来た。そのぐらいのつもりで頷いたのだけれど、ソファに上がってきた双子の瞳を見れば自分の選択が軽はずみだったかもと思わされる。 「とりあえず、脱がせてくれますか?」 「ぬがす、の?」 「「はい、どうぞ」」 寝転がるには十分な広さのソファの上で、聖と爽がそれぞれ葵に向かって手を伸ばす。 仕方なく葵は彼等の身に纏う薄手のニットの裾に順番に手を掛け、上へと引き上げてやった。小さな子供の着替えを手伝っているような感覚。こうしていると確かに可愛い年下に思えるのだが、むき出しの半身は葵よりもずっと男らしい。色白で細身ではあるけれど、綺麗に筋肉が付き、引き締まっている。 羨ましい。そう感じて思わず正面に座る爽の肌に指を這わせれば、彼がくすぐったそうに息をついた。 「ッ……葵先輩、そういうことすると手加減しませんよ?」 今度は背後からではなく、正面から頬を掴まれて唇が合わさった。どこか照れを押し隠すような爽の表情は、葵から動かなければきっと知ることはなかった。 こうして知らない一面を暴けるから、体に触れたいと思うのだろうか。葵は少しだけ行為の意味を自分なりに解釈し始めていた。 「葵先輩も脱ぎましょうね。ほら、万歳して」 爽とのキスの合間を縫って、さっきとは違い背後にまわった聖が葵の脱ぎかけのカーディガンとカットソーに手を掛けてくる。爽からのキスを受けるだけで精一杯の葵が下着と靴下だけにされるにはそう時間は掛からなかった。 「葵先輩、今から俺がすること、爽にシてあげて?」 「え、俺からでいいの?」 「いいよ、先に葵先輩触りたいもん」 葵が聖からの提案を受け入れる前に、勝手に二人は話を進めてしまう。何をされるか、させられるかが不安で仕方ないが、爽が嬉しそうに笑うから拒みにくい。

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